物の数え方や数値的な表現のなかには、校閲記者も迷うものがある。わかりやすく表現するためにはどんなことに気をつけるべきか。毎日新聞校閲センターがまとめた書籍『校閲記者も迷う日本語表現』(毎日新聞出版)から一部を紹介しよう――。(第2回)
水道の蛇口はどう数えればいいか
【質問】
水道の蛇口、どう数えますか?
【回答】
「個」を使う……47.1%
「本」を使う……26.6%
どちらでも違和感はない……13.7%
形状により使い分ける……12.6%
「個」が優勢ですが、「本」派も「違和感がない」を含めると4割ほどでしょうか。「使い分け」派の中にも「本」を使う人がいると思うので、もっと多いのかもしれません。「どちらでもない」という選択肢を用意できなかったのが悔やまれますが……。
言語学者、飯田朝子さんの『数え方の辞典』(小学館、2004年)によると、蛇口の数え方は「本、口」とのこと。「個」は含まれていません。もちろん、一般的に物を数える時に使いやすい「個」が間違いということではありませんが、かなり衝撃的でした。そもそもが「蛇口」なので「口」は分かります。ではなぜ「本」なのか?
今回の質問のきっかけになった記事は、公園の水飲み場などで蛇口の盗難が相次いでいるというもので、蛇口を「3本」と数える表現がありました。水飲み場の細長いものと想像はできましたが、例えば学校の校庭の手洗い場にある蛇口でも「本」なのでしょうか。辞典には書かれているものの正直納得がいかず、同僚を何人かつかまえて相談してみました。
「盗むとなると、パイプの部分なのでは?」「台座にくっついていると、『個』という感じだけれど……」。明らかになったのは、どこまでを「蛇口」と捉えるかという認識の違いでした。