赤ちゃんはどうやって言語を習得していくのか。慶應義塾大学環境情報学部の今井むつみ教授は「赤ちゃんの時から聴覚は発達していて、リズムや音の高低を聞き分けることができる。だから、音の響きが良く、発音しやすいことばから話すようになる」という。元陸上選手・為末大さんとの共著『ことば、身体、学び』(扶桑社)より、一部を紹介する――。
彼の唯一の最愛の愛らしい小さな男の子を保持し、話すために彼を教える思いやりのある父親。
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赤ちゃんが最初に学習するのはリズム

【為末】本書の1章で、オノマトペは身体により近く、オノマトペを使うことで、子どもの動詞学習がより容易になるということをお聞きしました。実際、スポーツの世界では、音の高低やリズムは、人の身体の動きを誘導します。では、ことばと身体には、関係があるのでしょうか?

【今井】まず、リズムというところからお話しすると、言語にいろいろな要素がある中で、赤ちゃんがお母さんのおなかの中で、最初に学習するのは、リズムなのです。

【為末】へえ!

【今井】赤ちゃんはお母さんの羊水の中にいて、細かい音の区別はできないのですが、リズムと音の高低、つまり韻律はわかるわけです。だから生まれてすぐに、自分の母語のリズムと、そうではない言語の韻律を区別することができると言われています。

文字も単語も分からないので韻律が手掛かりに

これは、言語を学習する時に、とても大事な第一歩なのです。大人は文字ベースで外国語を習いますが、赤ちゃんは文字もわからないし、そもそも単語の意味もわかりません。

だからどのように、文を大まかな構造に分けていくかというと、そこで韻律が大事な要素となるのです。例えば「ここで下がった」「息継ぎをした」「ちょっと間が開いた」というリズムや音の上がり下がりは、赤ちゃんにとって、「ここが文の切れ目なんだ」ということを知る大事な手がかりになっているのではないかと思います。

【為末】今のお話で思ったのですが、リズムは大人が文章を読んで理解するうえでも影響しますよね。言葉が印象に残る時には、論理的にわかることと、言葉の響きが残ることがあると思います。詩なんかは後者をとても意識している感じがしますよね。

僕も文章を書く時は、読み上げた時に、音として入ってきやすいことばかどうかを気にする癖があります。