文章では避けるほうがよさそう

どうでしょう。「違和感を感じる」は全て「違和感を覚える」「違和感がある」に直してしまえ、というのはためらわれませんか。「理屈ではそうだとしても、やっぱりくどい」という人もいるでしょう。実際にアンケートでは多くの人がそう感じていますし、新聞・通信社の中には「違和感を感じる」を使わないようにしているという社も一定数あります。

文化庁の文化審議会国語分科会が2021年に出した報告「新しい『公用文作成の要領』に向けて」の中でも、「違和感を感じる」は「違和感を覚える、違和感がある」に直すように例示しています。ただしこれは「冗長さを避ける」という項目の中で、「むやみに用いないようにする」と説明されているものです。誤った表現ではないけれども、冗長であるため公用文にはなじまないというわけです。

公用文に限らず、他人に見せる文章で「違和感を感じる」を使うと「冗長だな、洗練された文章ではないな」と思われてしまうかもしれません。新聞の読者になるべく違和感を与えないことを目指す校閲記者としては、今回のアンケートも踏まえ、「違和感を感じる」は基本的に避けたほうがよさそうです。ただし「これは誤用だ! 使ってはいけない!」とは断定しない。それくらいのスタンスが妥当ではないかと感じます。

頭を抱えているビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
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言い換えにくい「犯罪を犯す」

【質問】
「犯罪を犯す」という書き方、どうしましょう?

【回答】
「犯」がダブるので「罪を犯す」にすべきだ……49.5%
「犯」がダブるので「犯罪をする」にすべきだ……5.1%
「歌を歌う」と同じで問題ない……45.5%

「『犯』がダブるので『罪を犯す』にすべきだ」と「『歌を歌う』と同じで問題ない」でほぼ二分という結果になりました。思ったよりも容認派が多かったという印象です。言い換えがしにくい、という事情があるのかもしれません。「犯罪をする」とはあまり聞かないし、「罪を犯す」はなんかちょっと違う気がする――と思った人が多かったのではないでしょうか。もっとも、「犯罪を行う」などと選択肢を増やしておけば「問題ない」の率は多少減ったかもしれません。

毎日新聞用語集の1992年版では「犯罪を犯す→罪を犯す」と直すことになっていました。この規定は、次の1996年版でなくなっています。やはり機械的に直すことに抵抗があったのでしょう。

とはいえ、用語集になくなったというのは「どんどん使いなさい」ということではありません。最近も、記者から「犯罪を犯す」は使っていいのか、「罪を犯す」と直していいのかと相談されました。「犯罪を犯す」「罪を犯す」ともに、使用へのためらいが感じられました。