不況にともなって賃料も下がり続けている。坪当たりの平均賃料は10年2月末で1万8434円と、前年同月比では14.7%も下がった。需要に比べて供給が多いため、賃料にも、まだ底打ち感が出てこない。
こうした事情を背景に、企業は借りているフロアの床面積を縮小したり、賃料の安いビルに引っ越すことで、経費の節減を図る。引っ越す場合は、引っ越し費用だけでなく、ビルの原状回復費用もかかるが、2~3年で元が取れれば、移転を決断するようだ。
コスト削減が「守りの引っ越し」だとすれば、一方で「攻めの引っ越し」もある。これまで複数のビルに分散していたオフィスを、1カ所に集めて、業務や事務の効率化を図ったり、社内のコミュニケーションの向上を図ろうというものだ。FR、楽天、マイクロソフトの引っ越しは、これにあたる。
先述のFR社員もこう語る。
「グループ会社が結集したので、グループ会社の仕事が圧倒的にやりやすくなった。海外の会社についても、テレビ会議とか、インフラが充実している」
例えばいまなら「複数フロアに分散していたオフィスを、ワンフロアに大きくまとめても、従来の8掛けくらいの費用で入れる」(不動産関係者)というから、伸びている企業にとっては、賃料が下がったいまは、逆にチャンスというわけだ。
FRが入居する前の借り主は、一時は時代の寵児ともてはやされたグッドウィル・グループ(現ラディアホールディングス)やUSEN(フロア移転)。いまや両社とも往時の勢いは全くない。FR社員は、
「だから、企業の明暗云々、という見方をされることがよくありますね。うちも業績が悪くなれば撤退でしょうね」
※すべて雑誌掲載当時