お金以外の目的をもって仕事をしてみる
では、どうすればよいのでしょうか。1つの方法は、お金以外の目的や楽しみを持って仕事をすることです。老後はフルタイムで月30万円も稼がなくていいでしょうから、何か自分に合ったことを見つけて、週に何時間か働くことを考えてみるのはいかがでしょうか。
月に3万円でも手に入れればいいと考えて、新しいことに取り組めれば理想的です。アルバイトやパートでもいいと思います。また、今の時代はネットを通じて元手をかけずにいろいろなことを行えますので、意外なことが新しい仕事のネタになりえます。趣味のものづくりや自分が持っているノウハウが小遣い稼ぎになる可能性もあります。少ない金額からでも何かをはじめてみるのも1つの手です。
最初のうちは月1万円や3万円くらいにしかならないかもしれませんが、「うまくいけば100万円以上になるかも」と考えたら、ワクワクするではありませんか。うまくいかなくても、「元手はほとんどかかっていないし、自分で楽しんでいるからいいや」と思えます。
本当に生活がカツカツならば別ですが、そうでなければ、「生活はなんとかなる」と考えて気持ちに余裕を持てるかどうかが、高齢者の幸福度を左右するポイントだと思います。幸福学の「なんとかなる因子」です。
他人のためにお金を使ったほうが幸福度が高い
幸福感を持って仕事を続けるには、お金の使い道を考えることも大切です。お金という地位財を持っているだけでは幸せは長続きしませんから、自分が幸せになるような使い方をしたいものです。
お金の使い方については、おもしろい実験があります。カナダの社会心理学者エリザベス・ダン教授を中心としたブリティッシュ・コロンビア大学のチームが、お金を自分のために使った場合と、他人のために使った場合とで幸福度を比べる実験をしたのです(*2)(*3)。
アメリカ人630人を対象にした実験では、お金を自分のために使ったときと、他人のために使ったときの幸福度をそれぞれ5段階で評価してもらったところ、他人のために使ったときのほうが、幸福度が高いという結果が出ました。また、カナダの大学生にお金を手渡し、その日のうちに使うよう指示した実験では、他人のために使ったグループのほうが、自分のために使ったグループよりも幸福度が高くなりました。
(*2)Dunn, EW., Aknin, LB., & Norton, MI. (2008). Spending money on others promotes happiness. Science, Vol.319, No.5870, 1687-1688.
(*3)Dunn, EW., Aknin, LB., & Norton, MI. (2014). Prosocial spending and happiness: Using money to benefit others pays off. Current Directions in Psychological Science, 23(1), 41-47.