起こったことは淡々と受け入れる

プロレスラー蝶野正洋の全盛期を知っている人には、今の姿はがっかりかもしれない。それは俺自身だって思うよ。この年齢ではさっそうと動きまわって、こんなことをしたい、あんなこともといった青写真を漠然と描いていたけど、それとはかけ離れたコンディションだからね。

でも、振り返ってもしょうがない。

ひどい症状を押して頑張ったからこそ、みんなが認めてくれる今の自分がいるんだし、もし、あのとき無理をせずに諦めていたら、健康は残ったけど名誉にはあずかれなかったかもしれない。

どっちがいいかは死ぬまでわからないけれど、現役でやっている以上は自分の中である程度は覚悟しながらやっていた。2度目のG1クライマックス優勝のときは痛み止めを打ちながら、何とか最後まで闘い抜いたしね。

健康に関しては、試合をこなしているときは食べないと体重がキープできない体質だった。もともとは90キロで、食事とトレーニングで20キロふやして試合をしていた。だから、食べないと減ってくる。

30代後半になると食べなくても体重は減らなくなってきたけれど、20代は食事に連れていってもらってさんざん食べて、寝る前にもラーメンを1杯、2杯。常に24時間、胃に何かを入れている状態だった。

それもあって、40歳手前くらいで糖尿病の気が出てきちゃったけど、まあ、それも、いわば職業病の一種でしょうがないかな。糖尿病に関しては、尿酸値が一般の人の倍以上というのが続いて、そうなるとふらふらしてしまうんだよね。

それが首のけがも治りが悪かったりする要因のひとつらしい。最近はようやく基準値の7.0mg/dL以内に落ち着いてきたけど、50代に突入してから、特にそういうのがいろいろ出てきたんだよ。

40歳になったら、今の自分の生活を見直すべき

50代っていうのは、それまでの不摂生や暴飲暴食とか、むちゃな生活のツケが人それぞれ、いろんな形で出てくる時期なんだろう。俺の場合、体の不調については、実は40代に入ったあたりから実感があった。

まず、試合の疲れがなかなかとれない。

若い頃は、試合をやって巡業先で朝まで酒を飲んで、そのままバスで移動して、到着したらすぐに練習というのが全然平気だった。

蝶野正洋『「肩書がなくなった自分」をどう生きるか』(春陽堂書店)
蝶野正洋『「肩書がなくなった自分」をどう生きるか』(春陽堂書店)

それが、30代前半くらいからちょっとキツいなと感じるようになり、35歳を越えたあたりからは「これはもう休んだほうがいい、明日のために」と、荒っぽい生活に対して及び腰になってくる。そして、40歳になったらもう外に出たいと思わなくなるよね。「だったら飯を食って早く休もう」と。

サラリーマンでいうと、営業なら夜のつきあいとかで不規則な生活や内臓に負担をかけっぱなしの生活をどうしてもやめられない。デスクワークにしても、長時間同じ姿勢でやっていたら、首、肩、腰への負担は計り知れないし、内臓系の動きも不活発になる。運動不足による生活習慣病の危険もある。

断言するが、どんな仕事に就いている人も40歳になったら、今の自分の生活を見直すべきだ。そのまま40代、50代と生活を改めずに突入すると、いざ自由に使えるお金と時間を手に入れたとしても、それを謳歌おうかする健康な体を失い、毎日体のどこかに不調を感じながら過ごすことになりかねない。それって、とてつもないストレスだよ。

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