できる限り自宅でひとり暮らしを続けたいという人は多い。ジャーナリストの小山朝子さんは「いずれ他者の介助が必要になるときがきても、自分で自分の介護をすることは可能だ」という――。
※本稿は、小山朝子『自分で自分の介護をする本』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
「自分で自分の介護をする」とは
「自分で自分の介護をする本」という本書のタイトルを見て、身をよじりながら自分をお世話をしている自分の姿をイメージした人もいるかもしれません。
「介護」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは「介助」という言葉で表現される行為で、具体的には食事・入浴・排泄など日常の動作の手助けをすることを指します。
一方、「介護」はその人が望む生活を送るための支援であり、その実現に至るまでの過程も含みます。
私流の解釈では、「介助」は誰かの力が必要になるかもしれませんが、「介護」は自分自身でできることもあるように思うのです。例えば体が不自由になった場合に自分はどのような生活を望むのか、その生活を送るための計画を立て、実行していく――。そんなふうに人々の中の介護のイメージが能動的なものへと変わってほしいと考えています。
タバコを吸いながら死ぬまで自宅で暮らしたい
かれこれ20年以上前になりますが、当時私は、認知症でひとり暮らしを続けている男性の取材をしていました。長いあいだ、自分の住む町で洋服の仕立て屋さんを営んでいたとのことで、ご自宅を訪れると洋服などが所狭しと散乱し、部屋の片隅には古い足踏みミシンがありました。
私と出会ったとき、すでに日常会話がままならない状態でしたが、彼は元気だった頃から「自分はタバコを吸いながら死ぬまでここで暮らしたい!」という主張を繰り返していたため、介護サービスを提供するスタッフや近所の方々が、火事を起こさないようにと交代で見守りをしていました。
ご近所の方によるこの「介護」のかたちは、ずっと私の心に残り、自分の望みを常々口にすることで、彼もまた「自分で自分の介護」をしていたのだと、いまになって考えるようになりました。