こちらの苦悩が伝わるほどアホは喜ぶ
目的は挑発や戦って勝つことではない。勝ってもさらに陰湿に憎まれたりしたら、何のために戦ったのか意味がわからなくなる。目的は「こいつを怒らせたらやっかいだ」と思わせることだ。
「私はあなたと戦ったりするような無駄は絶対しませんが、あんまりいやらしいとやるときはやりますよ」と心の中で常に唱えておくのだ。そうすれば、それを相手が感じてくれるようになる。アホと戦ってはいけないが、なめられるのもよくない。なめられることが戦いの原因を作ってしまっているともいえる。「アホとは戦わない」気持ちをもちながら「やるときはやるよ」という姿勢も保持しよう。
アホの悦びはいたぶっている相手の苦悩である。相手の「怒り」「くやしさ」「悲しさ」などで垣間見られる苦悩が何よりの“蜜の味”なのだ。では最高の反撃とは何か? アホにはいたぶった相手が「全くこたえていない」様子がいちばんこたえる。これがやせ我慢とか怒りの転換などでもアホは喜ぶ。なぜならそれらは基本的にアホの攻撃が効いていることの裏返しだからだ。
アホが心から悔しがるとしたら、それは全くこたえていない、これから攻撃性を高めても効きそうもない様子である。いたぶっていることさえ理解されていない様子こそが最高の反撃なのだ。
「余計なことを言わない技術」が身を助ける
そのためには「無の境地」でスルーすることである。こいつは図太くいたぶりがいがないドアホだと思われることだ。鈍いと思われてもいい。悔しさを他で紛らわせるそぶりもよくない。八つ当たりもダメだ。そもそもなんとも思わないように心を整えよう。そのためには、どうすればいいか。目的に集中することだ。
アホを含め、誰に対してもリスペクトを持って、楽しく、親切にし続けるのだ。これを普段から普通に徹底していこう。楽しく、リスペクトを持って、親切に、淡々と堂々としている。こういう人こそ、アホがいたぶりの快感を覚えにくい。その根拠として、モビリティを持っておくことが大事である。いざとなれば、現在の職は辞しても何も困らない。そう思えれば、アホのいびりは気にならなくなる。辞められたら困るとまで思わせたら最高だろう。
アホを自分から遠ざけるためには、つけいる隙を与えないことも大事だ。そのために必要なのが「余計なことを言わない技術」である。
私にとっては世界の超一流の方々とビジネスを共にして身についた技術であり、お付き合いさせていただいた「日本の一流の政治家」も同様の技術をもっていた。別の言い方をすれば、「感じよく“沈黙に耐える”技術」である。