「戦わずに戦う」という戦略

勝つためにはどういう戦略・戦術が必要かも知ってほしい。なぜなら、守るものができ、人生の目標がはっきりし、立場もできあがってきてから、アホと戦うことは容易ではないからだ。

まず、失うものが大きすぎる。そして社会に出てから立場や守るものを背負って出会うアホに勝つ難易度は半端ではない。アホは、ポジション、資金力、権力を使って邪魔してくる。昔からアホが駆逐されないことには根拠があるのだ。そこからアホと戦うことがどんなに割に合わないかを思い知らされるだろう。

ただちに戦ってもいいと私が思うのは、あなたがなにもかもを持ち合わせている場合だ。それこそスーパーヒーローのように。生まれながらに資金力や権力に恵まれ発信力もある人も世界にはいるだろう。そういう人は戦ってもいいというより、戦う義務があると思う。しかし、多くの人がそうではない。ならば自分の人生の目標を達成することを最優先にした方がいい。

敵をつくらず味方を増やし、アホまでも巻き込み、その力を使って、人生の目標を達成してほしい。したたかに清濁併せ呑み、体制下で爪を研ぎ、時代を味方につけて、時を見て、味方をつくって立ち上がれたら立ち上がるという。じつはアホ本もそういう思いで書いた。英語でいう「Don't fight every battle」である。戦わずに戦うという道を戦略的に選んでいこう。

「やるときはやる」という姿勢を示すべき

スイスが永世中立国であることは広く知られている。そんなスイスは「日本国憲法第9条」がある日本のように平和を唱えているだけの国家なのであろうか? 答えは否だ。

スイスは国民皆兵の国だ。成人男性は軍事教練を受ける義務があり、20世紀初頭までは全戸にマシンガンを含めて武器が配備され、ほぼ全戸に核シェルターが設置されている。「平和を貫くために武装している国家」なのだ。しかし、隣国を挑発したり、追い詰めたり、そんな姿勢は見せない。いざとなれば戦う姿勢をチラ見せしているのだ。

挑発したり、追い詰めたりすることは厳禁だが、スイスにならってわれわれも「やるときはやるぜ」という姿勢をチラ見せすることはとても有効である。アホと戦わないことを目指すあまりに、過剰にいい人に見せたり、アホから逃げる姿勢が弱みに見えたりすることは避けないといけない。

アホは本来暇でガッツがない人物なので、「いい人」や「弱い人」をいじめたくなったりいじりたくなったりする傾向があるのだ。アホが絡んできて、相手を挑発しない程度に毅然きぜんたる姿勢を見せながら「スルー」を決め込むのだ。

握りこぶしで主張するビジネスマン
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アホを利用するために仲間に引き入れる時も、あくまでりんとした立ち居振る舞いを保つことだ。それでも、アホの有力ないじりターゲットである「いい人」や「弱い人」に見られてしまったら、これはどこかでファイティングポーズをチラ見せしないといけない。