それに対して中国はどうか。中国の不動産不況が日本やアメリカのそれと決定的に異なるのは、銀行が介在していないこと。そして買われていた物件が、居住用ではなく投資用である点だ。

中国の不動産バブルの背景には、70年代後半から中国の改革開放を推し進めた鄧小平の「先富論」がある。先に豊かになれる人から豊かになりなさいという意味で、中国人はこれを不動産投資で実践した。

具体的に言うと、先に上海でマンションを買った人が、値上がり後、そのマージン(余力)を使ってマンションを抵当に入れ、浦東など上海郊外に新たな物件を買った。新たに買った物件が値上がりすれば、それを抵当に入れて、また開発中のマンションを買う。それを繰り返すうちに不動産価格の上昇が地方都市に広がり、最初にマンションを買っていた人は金持ちになった。

購入した物件を賃貸に出せるならまだ資金が回りやすい。しかし、中国のマンションは内装を仕上げる前の段階で分譲する。人に貸したければ、オーナーはさらに3割程度追加投資して人が住めるように、水回りなどを整える必要がある。また、そもそも住宅の供給過剰で借り手もいない。地方都市の開発地区は、今やゴーストタウンを意味する「鬼城」と呼ばれている。

日本やアメリカのように住宅に住みたい人がいて、不況の原因が金融機関にあるなら、打つ手はある。しかし、中国の不動産不況は構造が違った。

中国の不動産不況は銀行をつぶしたり、救済しても終わらないが、一つだけ止めるすべがある。景気を、10年以上前のよかった状態に戻すのだ。

当時から不動産価格は上昇していたが、中国経済をけん引していたのは不動産ではなく、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)をはじめとする新興の大企業だ。ところが、自身のコントロールが及ばなくなることを恐れた共産党が締め付けをおこなったことで、新興企業はかつての勢いを失った。

企業の締め付けを緩め、再び活動の自由を与えれば景気が回復して、不動産価格の下落も止まる。ところが、現実にはこれも難しい。新興企業を締め付けた理由でもある「情報統制」を緩めると、習近平国家主席の悪口を14億の国民がSNSに書き込み始めるからだ。共産党は、民衆の力で革命を起こして中国を建国した。みんなが表立って共産党批判を始めたら、政権がひっくり返ることを知っている。習氏は、たとえ不況が続いても指をくわえてその様子を見ているしかないのだ。

中国と外交するうえで日本が持つ絶対的な強み

では、日本は袋小路に入った中国とどのように付き合えばいいのか。

現在の日本の外交は戦後一貫してアメリカの尻馬に乗っかっているだけだ。しかし、アメリカの没落が始まって久しい今日、それがいかに危険なことなのか、多くの日本人は気づいていない。

政治的問題を抱える3カ国
写真=iStock.com/Barks_japan
※写真はイメージです

経済が奈落の底に落ちていくさまを見守るしかない習氏は、国民の不満をそらすため対外的な強硬姿勢を強めていく。日本はアメリカの尻馬に乗っかっていれば大丈夫だと考えているかもしれないが、相手が集団であれば弱いところから狙うのが喧嘩の常道。真っ先に狙われるのは、アメリカの腰巾着である日本だ。中国は本気でアメリカと事を構えるつもりはない。腹いせに日本を叩いて国民もすっきりだ。

日本に必要なのは、アメリカの真似をして中国を敵対視することではなく、独自の付き合いを模索することである。たとえばアメリカからの経済的な締め付けに苦慮している中国に、80年代の日米貿易摩擦を乗り切った日本のノウハウを教えてあげる。日本はアメリカと違って中国とは2000年来の付き合いだ。それを忘れるべきではない。