中国の不動産不況が日米よりも深刻な理由

中国は今、過渡期にある。日本には、この過渡期の性格を見抜いている人が少ない。空気に流されて今のような付き合い方を続けていると、いずれ取り返しのつかないことになる。

成長を続けてきた中国経済に異変が起きていることは、誰の目にも明らかである。象徴的なのが不動産不況だ。中国の不動産大手「恒大集団」は8月、アメリカで連邦破産法15条の適用を申請した。恒大集団は2021年に巨額の債務不履行(デフォルト)に陥っており、破綻は時間の問題だった。

中国 グローバルインフレ不況 住宅不動産暴落
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また、不況は一企業の問題ではない。同じく不動産大手「碧桂園へきけいえん」も負債が膨らみ、デフォルトが危ぶまれている。負債総額は恒大集団が約48兆円、碧桂園が約28兆円で、中国の不動産全体では1000兆円にも上る。また、地方政府のインフラ投資会社「融資平台」では、負債総額が2000兆円に上っているという情報もある。日本が約30年前のバブル崩壊で経験した不動産不況では、230兆円という国費を救済に使った。負債額は4倍(または8倍)違うが、国土の規模を考慮すると、今の中国では当時の日本よりも深刻な不動産不況が起きていると考えていい。

ただ、日本の不動産バブル崩壊とは原因が異なることに注意だ。日本の場合はバブル景気で、不動産価格がどんどん上がった。このままインフレが続けば庶民はマイホームを買えなくなる。そのことが社会問題化して、政府は銀行による不動産への貸し付けを締め付ける、窓口指導と総量規制を行った。それが不動産不況の引き金になった。

その結果、銀行がいくつも潰れた。最盛期には15行もあった都市銀行が3つのメガバンクに集約され、悲惨な状況を招いた。そのダメージは大きく、日本経済は今でも回復していない。

アメリカの不動産不況にも触れておく。アメリカは80年代にS&L(貯蓄貸付組合)危機、08年にはサブプライムローン問題に端を発するリーマンショックが起きており、すでに2回の不動産不況を経験している。

そして現在、アメリカではふたたび不動産不況に突入する兆しがある。不動産価格が下落し、不動産の抵当価値が失われ、銀行は貸し剥がしを始めた。同時に銀行自体の格付けが落ち、取り付け騒ぎが起きている。性懲りもなく、3回目の不動産に起因する金融危機だ。