日銀はFRBと同じ間違いを犯している

米国のコアCPIは、2021年2月が1.3%、3月が1.6%、そして4月に3.0%に跳ね上がってから急騰した。FRB(米国連邦準備制度理事会)は、その1年後から政策金利の引き上げを開始したが手遅れだったとの非難の声が大きい。

【図表】消費者物価指数の12カ月の変化率(1980年1月~2023年4月)
出所=米労働省

引き締めが遅れたがゆえに、今やそのツケ(=より大きい引き締めが必要になった)を払っているのだ。

日銀はFRBのミスを全く学ばず、全く同じミスを犯しつつあるのではないか。日本は米国の2年遅れで、米国の後を追っていると考えられる。

CPIだけでなく資産価格も上昇を開始した。〔筆者注:資産価格(ストック)の上昇はインフレとは言わない。資産インフレと言う。インフレとはフローの観点の話だ〕日経平均株価が3万円台を回復し、バブル後の高値をつけている。

不動産価格も上昇している。不動産経済研究所が4月18日に発表したマンション市場動向によると、22年度の首都圏の新築分譲マンションの平均価格は6907万円と前年度比8.6%上昇し、史上最高値を大幅に更新した。

株価はバブル以来の高値更新、不動産価格も最高値を更新

東京23区内に限っていえば、平均価格は「億ション」に迫る9899万円で、前年度比17.2%上昇したとのこと。もはや平均的な給与所得者が夫婦共稼ぎでも、手が出るレベルではなくなっている。さらに3月単月で言えば、東京都23区では前年同月比2.7倍の2億1750万円、首都圏でいえば2.2倍の1億4360万円だという。

植田総裁は5月9日、衆議院財務金融委員会で藤巻健太衆議院議員の質問に対し「3月はたまたま高額物件の売りが出て平均価格を押し上げたせいではないか」と答弁したが、年度通しての上昇を考えると、果たして本当に「たまたま」なのか、疑問に思わざるを得ない。建築費の急騰を考えると、さらに首をひねる。

この株価、不動産価格の高騰は、1985年から89年までのバブル景気を思い出させる。89年のピーク時と同じ状況とまではいかないが、それに向かって進んでいる道中のようにも思える。

早く引締めをしなくて大丈夫なのか。このまま放置すると後に失われた30年ではなく、失われた60年、70年が続いてしまうのではないかと思えてならない。