日銀法では、日銀の金融政策の理念を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」と記されている。
各国中銀はインフレ対策として政策金利を急ピッチで引き上げてきたにもかかわらず、日銀にはそれができなかった。利上げをすれば含み損がさらに増えるからだ。日銀はインフレ対策を放棄するどころか、逆にインフレを促しているのが実態なのだ。
このインフレを、日銀はどうすることもできないだろう。総裁が代わってもそれは同じことだ。だから私は、ハイパーインフレを抑えるために中央銀行を取り換えざるを得ないと考えている。日本にインフレをコントロールできる真の中央銀行を作る必要があるからだ。
物価上昇なのに金融緩和を継続する日銀
日銀の植田和男総裁は、4月24日の衆院決算行政監視委員会で「現在は物価上昇率の基調が2%を下回っている」と答弁した。2023年度後半には2%を下回る見込みとして金融緩和を継続する方針を改めて示した。
しかし、直近の消費者物価指数(CPI)は昨年4月以降、前年同月比2%を上回る状態が続いている。今年3月は3.2%(前月は3.3%だった)に鈍化がみられたものの、これは政府の燃料費補助によるものだろう。
日経新聞電子版によると、電力大手7社は、6月から家庭向け電気料金を14%~42%値上げするという。このインパクトは、小さくない。4月に前年同月比3.5%に跳ね上がったCPIはさらに上昇していくと思われる。
この事態で、どう考えれば「物価上昇基調が2%を下回っている」との分析結果が出てくるのだろう。植田総裁は元東大教授であるが、学者先生の世界では、このような数字を見ても「2%を下回っている」と表現するのだろうか。
いつも楽観的な日銀
植田総裁が注目していると言われる「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」(コアコアCPI)の指数を見てみよう。
昨年10月に前年同月比2.5%となり(昨年9月は前年同月比1.8%)、2%を超えた。その後、昨年11月2.8%、12月3.0%、今年1月3.2%、2月3.5%、3月3.8%となり、4月は4.1%上昇し、41年7カ月ぶりの水準になった。
CPIの指標はいずれも上昇基調にある。それにもかかわらず、衆院決算行政監視委員会で植田総裁は「生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数は、2023年度後半には2%を下回っていく」と答弁されたが、その理由は何だろうか。
トレンドだけを見ていけばどう考えてもさらに上昇していくだろうし、2%を下回るとは到底思えない。見通しが楽観的と言われても仕方ないだろう。