とりわけ平坦な地形で自転車の利用が盛んな岡山市では、交通マナーといえばクルマよりも自転車の問題のほうが取りざたされていた。無灯火や信号無視、歩道を猛スピードで走行することはたびたび問題視されていた。
中でももっとも問題とされていたのは、駐輪である。2023年の現代では自転車は駐輪場に止めることが常識だ。しかし、岡山に限っては、この意識が定着してまだ10年ほどだろう。
それまで岡山人は、自転車は歩道に止めるのが常識だった。おおよそ繁華街の歩道は道幅の半分以上が駐輪場となっているのが当たり前、商店も「自分の店前の道はうちの駐輪場」として扱っていた。デパートなどの商業施設では駐輪場を整備するところもあったが、店先までの乗り付ける快適さをやめる人は少なかった。
当然、警備員がやんわりと注意することもある。しかし、大抵の岡山人は「わしゃ、ずっとここに止めとるんじゃ‼」と逆ギレしていた。40代以上の岡山人なら、天満屋・高島屋・トポス周辺のこの光景をよく覚えているはずだ。
岡山出身としてこれだけは言わせてほしい
歩行者も交通マナーの意識は弱かった。今でも桃太郎大通り(岡山駅前から続く目抜き通り)には、横断禁止の標識が立っている。こんな片側2車線で交通量の多い道路で、横断歩道のないところを無理矢理横断しようとする人はにわかには想像し難い。
だが、筆者が小学生の頃(1980年代)には、よくみられた。危険を避けるために歩行者用横断歩道を廃して歩道橋や地下道を整備していた通り(自動車、自転車用の信号機だけ残る)では「あんな面倒くさいもの使えるか」と、マナーを守って利用する人を嘲笑する風潮もみられた。
小学校では「歩道橋を使いましょう」といった指導はされるのだが、そもそも親が使わないのだから、子供が使うはずもなかった。こうした意識で育ってきた人々が長じて、ハンドルを握っているのである。交通マナーが悪いのは、当然だ。
だから、岡山では、いくらドライバーにマナー遵守を呼びかけたところで対策には限界がある。自転車や歩行者も含めて、ゼロベースでマナーを教えていくのが肝要だろう。
岡山の交通マナーの改善は一朝一夕には進まないのは間違いない。他県から岡山に来た人には、十分に注意してもらいたい。