「バイデノミクス」の名のもと、財政の大盤振る舞い

取引が減ると国内の経済活動、特に雇用を縮小させるので、放置すると社会問題になる。日本では政府が1人10万円ずつの給付をして需要を保とうとした。バイデン政権も未来のインフラ構築をするため、「バイデノミクス」の名のもと、財政の大盤振る舞いを行った。図2のように需要曲線を一時的に右に動かして、取引量をOB方向に引き上げようとしたわけである。

通常の景気循環とは異なるインフレが発生する構造 図2

この状態でコロナ禍が収まり、取引障害(R’‌S’)が解消されると、今度は受給のマッチングする点がQ点に変わる。これは通常よりも取引量過多の状態であり、コロナ以前のP点に比べても物価が上がってしまう。これが近年のアメリカで起きたインフレの一因である。ここで財政を縮小して元に戻すという方法もあるが、アメリカではより柔軟に調整が効く金融政策に頼った。FRBがほぼ0%だった政策金利を何回も引き上げて5%超にして、インフレを調整。需要曲線を左に動かすことでコロナ禍前のP点に戻そうとしたのである。そしてそれはおおむね成功したらしい。現在の株価高も好景気だけでなく、沈静化した物価を好感している。

経済メカニズムから見た場合、通常の景気循環に比べると現在は取引障害が解消する過程にあり、本来の需要や供給が失われたわけではない。よって、景気後退の起きる危険性は低いと考えられる。将来の予測には、単に過去の数字だけを追うだけでなく、理論的な視点から「今何がどのような理由で起こっているか」を見極める必要がある。

(構成=川口昌人)
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