骨上げの最中にケータイが鳴り…

仕方なく、以前勤めてくれていた近所のバイト学生たちに連絡をすることになった。3人目でどうにか人が確保できた。そうまでして出かけた葬儀だったが、骨上げの最中にケータイが鳴った。

「日比野君が来ないんです」

日比野君はようやく探し当てた元バイト(*12)の学生だ。午後2時に日比野君がシフトに入り、それまで勤務していたパートの三宅さんが退勤することになっている。しかし、日比野君が来ないため、三宅さんが上がれず、困って電話してきたのだ。

「私、2時半までに子どものお迎えに行かないといけないんです……」

仁科充乃『コンビニオーナーぎりぎり日記』(三五館シンシャ)
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すがるような声にせっつかれて、葬儀の席を外し、夫と2人で手分けして、今すぐ入れる助っ人探しが始まった。15分ほどして、夫が「1人見つかった!」と大きな声を出した。

「日下さんが今すぐ店に向かってくれるって!」

ホッと一息ついた瞬間、ポケットのケータイが鳴る。店の番号だ。

「すみません。ちょうど今、日比野君が店に来ましたので、もう大丈夫です」
「……」

結局、日比野君は予定より25分遅れでやってきた。今、大急ぎで店に向かってくれている日下さんにも時給を払わないといけないだろう。静かな火葬場の片隅、私と夫は顔を見合わせるのだった。

(*12)元バイト 地元在住の子たちは常連客となって買い物に来てくれるし、地方の子なら大学の同窓会などでこちらへ来る機会に顔を出してくれたりする。今のバイト学生が「元バイトっていう人たち、よく来ますね」と言う。元バイトの子が、自分の子どもを連れて買い物に来てくれるのはとくに嬉しい。

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