創業家vs.物言う株主の攻防は訴訟に発展

アクティビスト(モノ言う株主)として知られ、全株式の17%超を握る香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」が会社と創業家の間に疑わしい取引があると主張し、関係を絶つよう要求していたもので、内山氏とのすべての契約を解除するという。物言う株主の主張を会社側が受け入れるという、創業家にとって悪夢のような結末となった。

メガバンクの幹部は、「オアシスは17%もの株式を買い集めたのに対し、創業家の資産管理会社であるウチヤマ・インターナショナルは議決権ベースで6%強の株式しか保有していない。資本の論理では勝ち目がなかった。しかも、オアシスによる他の株主への働きかけは巧妙で、詰め将棋のように創業家を追い詰めた」と指摘する。

その手法のひとつが、独自のホームページを作成し、内山一族のフジテックの私物化を告発するキャンペーン展開だった。ホームページでは内山一族が私的利用を目的として東京・港区の超高級マンションを購入したり、内山氏の自宅(兵庫県西宮市)の庭の手入れにフジテックの制服を着た人物を利用したりする様子が開陳されていた。

だが、解任された内山氏も黙ってはいない。「会社と創業家の間の取引について、オアシスが事実に反する主張をしたことで名誉を傷つけられた」として名誉毀損きそんによる損害賠償請求訴訟を5月、東京地裁に起こした。取締役会決議の無効確認訴訟や株主代表訴訟も提起する構えだ。フジテックと物言う株主の戦いは第2幕に入っている。

東京の夜景
写真=iStock.com/kyonntra
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創業家による経営体制を批判されたツルハ

アクティビストと創業家が対立するケースはフジテックばかりではない。ドラッグストアの優等生、ツルハホールディングス(HD)は8月10日の株主総会で同じくオアシス・マネジメントに厳しい株主提案を突き付けられた。

結果はオアシスの提案がすべて否決され、会社側が提案した鶴羽樹会長ら現経営陣8人と新たな社外取2人の計10人の選任案が可決されたが、アクティビストとの対立は燻り続けそうだ。

オアシスは株主提案で「創業三家のツルハHDの株式保有比率は10%未満であるにもかかわらず、監査等委員以外の取締役5人のうち4人を創業三家が占めており、その選任プロセスに疑問が残る」「創業家による各子会社への過度な支配体制は、シナジーの発現を妨げ、ガバナンスの低下を招いた」と指摘していた。

ツルハHDは18年に愛知県地盤のビー・アンド・ディー、20年に福岡地盤のドラッグイレブンなど中堅ドラッグストアの買収を繰り返しながら規模を拡大してきた。傘下にはくすりの福太郎やレデイ薬局、杏林堂グループなどもある。

会長には創業家3代目の鶴羽樹氏が、社長には樹氏の次男である鶴羽順氏が就いている。また、「社外取締役には創業家と親密な関係にある人物や、ツルハのルーツである北海道財界と馴れ合い人事で選出された可能性がある」と、オアシスは指摘していた。