博打商品で5億円もの給与を手にするヘッジファンド
ちなみに地銀行員の平均年収は約621万円、第2地銀は約551万円(2020年3月期、東京商工リサーチ調べ)であるのに対し、ヘッジファンドのマネージャーは基本給が平均31万5000ドル(約4568万円)、ボーナスが同331万ドル(約4億8000万円)、投資銀行のバイスプレジデント(課長級)の基本給が27万5000ドル(3988万円)、ボーナスが32万5000ドル(約4712万円)といったところである(GT Hedge Funds、 Mergers & Inquisitions調べ)。
この手の博打的な金融商品は、1980年代から外資系投資銀行が日本に持ち込み、バブル崩壊後の損失先送りなどにさかんに使われた。モルガン・スタンレーが住宅抵当証券を集めて作った「AMIT(エイミット)」、極端な金利先取りをする「ステップダウン債」、クレディ・スイス・ファイナンシャル・プロダクツ銀行が日本債券信用銀行向けにやった株のプットオプションと借り入れ返済をリンクさせた損失先送り商品、「日経平均リンク債」など枚挙にいとまがない。
金融にマジックはない
かくして1997年に山一証券は破綻し、翌年、日本長期信用銀行と日債銀が国有化され、2011年にはオリンパスの巨額損失隠しが明らかになった。2000年5月から2003年1月にかけては、ドイチェ証券、ビー・エヌ・ピー・パリバ証券、ソシエテ・ジェネラル証券、シティバンク、ING証券などが、損失先送り商品の販売(ないしは勧誘)で、金融庁により、一部業務の停止などの行政処分を科された。
こうした仕組み商品のからくりと外資の手口は拙著『巨大投資銀行』(角川文庫)に詳しく書いたので、是非読んで頂きたい。
さすがに日本の大手企業は痛い目に遭って学習し、2000年4月から金融商品の時価会計も導入されたので、こういう馬鹿なことはやらなく(あるいは、やれなく)なった。ところが今度は、遅れてやってきた地銀が、何も知らない個人に売りまくったのである。
金融にマジックはない。リターンが高ければ、当然、リスクがある。カルロス・ゴーン氏が新生銀行に勧められて引っかかった仕組み預金など、高金利の預金も、すべてオプションによって作られている。高利回りの商品を勧められたら、まずはオプションを疑ってかかるべきである。