地下に光を届ける手法は、2007年開館の展示施設「21_21 DESIGN SIGHT」にも見られる。東京・赤坂の東京ミッドタウン内にある安藤氏設計のこの施設は、床面積の8割が地中に埋設する地上1階・地下1階の低層建築だ。
平屋建ての簡素な施設かと思って足を踏み入れると、予想外の空間の広がりに息を呑む。こちらも隣接するオープンスペースの特性を損なわないよう視界に入る建物の容積を抑え、サンクンコートを通じて地下層に光を運ぶ方式とした。
安藤氏の建築に住むことがステータス・シンボルになった
安藤氏は隈研吾氏や伊東豊雄氏らとともに国際的に高い評価を受けており、1995年にはプリツカー賞を受賞した。建築に意義深い貢献をした人物をたたえ、世界でも年間たった1人にだけ授与される権威ある賞だ。日本人としては1987年の丹下健三氏など、8人しか受賞者がいない。
セレブたちは洗練された建築に惹かれている。英ガーディアン紙は、むき出しのコンクリートとガラスが特徴的な安藤建築が「アメリカのスーパースターたちのステータス・シンボルとなっている」と述べている。
例えば、女優のキム・カーダシアンは今年3月、大阪市内にある安藤氏の事務所を訪ねて設計プランを話し合った。Instagramに「匠本人にお目にかかった」と投稿し、「一緒に作業を進めることができ、そしてついにこの特別なプロジェクトが実現することになって、とても光栄に思うと同時に畏敬の念を抱いている」と心境を打ち明けた。
安藤建築は、もはや芸術品に近いと評価するセレブもいる。スペイン日刊紙のエル・パイスによると、アート収集家で金融業者のリチャード・サックス氏は、所有していた安藤建築を売りに出した際に「これは単なる家ではありません。ピカソのキュビズム作品のように、とても重要で希少な存在なのです」と述べた。