ゴルフといえば、一昔前まで社用族のものというイメージが強かった。しかし、バブル経済が弾けてからゴルフ離れが著しく、ゴルフ用品がだぶつき、格安の値段で売られている。前からゴルフに興味を持っていた私の知人はこれをチャンスと考え、ドライバーを除いたバッグ付きのフルセットをわずか2万円で買って練習を始めた。近々、念願のコースデビューを果たすそうだが、「インターネットの“早割り予約”を利用して土日でも5000円以下のコースを選ぶつもりだよ」とさも楽しそうに話す。
ここで思い出されるのが、イギリス人の労働者階級のライフスタイルである。かつて7つの海を支配した大英帝国であるが、「揺りかごから墓場まで」に象徴される高福祉政策の反動による財政破綻などによって1970年代以降、「イギリス病」と呼ばれる深刻な不景気に悩まされる。20%以上の失業率が続き、まさに職にありつければ御の字の状況であったのだ。
しかし、彼らの生活が不幸のどん底かというと、そうではない。「ビデオ・ナイト」を設定して、お酒や料理を友人の家に持ち寄り、ビデオ鑑賞をしながら皆で楽しんでいる。また、休日になると「ピクニック・バンパー」という大きなバスケットに、残り物のゆで野菜やパン、ソーセージを詰めこんでピクニックに出かける。日本の節約上手のロウアー・ミドルが実践していることを、彼らは40年以上も前から行っていたのだ。
「We were poor but we were happy」
ワーキングクラスの人が過去を振り返るときの常套句だそうである。その訳はずばり「私たちは貧乏だったが、幸せだった」。日本には「武士は食わねど高楊枝」という言葉があるが、そんな片意地をはらずとも、お金がないなら、ないなりに日々の生活を楽しむ方法を学ぶ時代が到来しているような気がする。
※すべて雑誌掲載当時
1968年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。自動車メーカー勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。『サラリーマンは2度破産する』『貯まる!資産3倍手帳』など著書多数。