欧州より心筋梗塞が少ない日本と韓国

では、これらの国は、ほかのヨーロッパ諸国とでは「何」が違うのか?

そこで仮説として出されたのが、「赤ワインの消費量」だったのです。

たしかに、ここで挙げた国々の人々は、よく赤ワインを飲みます。ドイツ人は、赤ワインより、ビールや白ワインをよく飲むイメージがあります。アメリカ人やイギリス人も、当時はビールやウィスキーのほうを好んでいたはずです。

そして、この「フレンチ・パラドックス」が、アメリカのメディアで取り上げられて話題となり、アメリカだけでなく、日本を含めて世界中で赤ワインの人気が高まることになったのです。

赤ワインに含まれる「ポリフェノール」が健康にいいと言われ出したのも、この頃のことです。

ただ、その後、さらに意外な事実が判明しました。

OECD(経済協力開発機構)に加盟する国を調べてみると、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルよりも、もっと心筋梗塞の少ない国があったのです。

それが日本と韓国なのです。

長寿食の法則「偏らない。何でも食べる」

日本人と韓国人は、国際的に見て、なぜ心筋梗塞が少ないのか――。

これは「フレンチ・パラドックス」の理屈では説明できません。

日本にしても、韓国にしても、最近では、赤ワインを飲むこともかなり多くはなっていますが、その消費量はフランスやイタリアといったラテン諸国には及びもつかないからです。

つまり、日本と韓国の心筋梗塞について言えば、「赤ワインを飲む・飲まない」だけでは説明できないのです。

そこで注目されたのが、食生活でした。

と言うのも、日本や韓国、そしてフランスやイタリアといったラテン諸国の食生活には、意外にも共通項があったのです。

それは肉だけでなく、魚をよく食べる食習慣です。

アメリカ、ドイツ、イギリスの食生活では、肉はよく食べますが、魚はそれほど食べません。日本人は言うまでもなく、韓国人も魚はよく食べます。

韓国人の食生活というと「焼肉」のイメージがありますが、あれはどちらかといえば北の北朝鮮の料理です。

南の韓国では、プサンのように日常的に魚を食べる習慣があるところが少なくありません。フランスやポルトガルでも、魚料理は広く食べられています。

それ以外のラテン諸国でも同様です。地中海料理と言えば、カルパッチョなどの魚料理を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

そもそもフレンチやイタリアンのコース料理は、メインディッシュが二種類あって、肉と魚の両方を食べるようになっています。

高級レストランのメイン
写真=iStock.com/webphotographeer
※写真はイメージです

つまり、「フレンチ・パラドックス」に端を発した問題は、きわめて平凡な答えに辿りついたのです。

それは、健康を維持するための食生活の基本は、何でも食べること。

肉でも魚でも野菜でも、それだけに偏るのでなく、バランスよく食べること。

それこそが、長寿の人の食生活(長寿食)に共通する「一つの法則」なのです。