「タイプR」が意味すること
そもそもシビックタイプRとは、どういうクルマなのだろうか。少し歴史を振り返りたい。
シビックは、1972年に小型大衆車としてデビュー。初代モデルから輸出が行われ、ホンダを代表する世界戦略車として活躍してきた。そのラインアップの中には、ホンダらしい高性能エンジンを搭載したスポーティグレードを用意。若者を中心にクルマ好きから愛されてきた。
その最高潮となるタイプRの第一弾は、1990年にホンダが発売した国産初のスーパーカー「NSX」に、92年に追加された。サーキットで、より速く走るために快適性を犠牲とし、各部の専用チューニングと徹底した軽量化を図ったモデルである。
スーパーカーである「NSXタイプR」は、高性能だが、800万円と超高価。そのエッセンスを大衆車に注ぎ込んだのが、95年登場の「インテグラ タイプR」と97年登場の「シビックタイプR」なのだ。
1997年に登場した初代シビックタイプRは、6代目シビックをベースとしており、高性能化を図りながらも、なんと200万円という安さ。シビックのスポーティグレード「SiR」と比べても、20万円程度高い価格に収められており、買いやすいモデルだった。
その後、「NSX」と「インテグラ」は販売終了したこともあり、シビックだけが、タイプRの歴史を守り続けてきた。だが、2012年、排出ガス規制への対応が困難になったこともあり、3代目をもって国内販売を終了した。
4代目から続く歴史
大きく流れが変わったのは、2015年登場の4代目タイプRだ。自然吸気エンジンの歴代モデルとは異なり、高出力のターボエンジンを採用。さらに高性能を示すべく、ニュルブルクリンク北コースでのタイム計測を行い、当時FF車最速記録を持つフランス車「ルノー「メガーヌR.S. 275トロフィーR」の記録を打ち破り、トップタイムをマークした。
タイプR復活モデルかつ750台の限定車ということもあり、購入希望者が殺到。購入の抽選倍率は10倍を超えた。
当然、シビックタイプRに王座を奪われたルノーメガーヌR.S.も黙っているわけがなく、そこにドイツの高性能ハッチバック「VW ゴルフ GTI」も参戦。3台による激しいトップ争いが繰り広げられた。シビックタイプRは新型となる度に記録更新を続け、王座を獲得してきた。
これが近年のシビックタイプRがニュルでの記録を発表する理由でもあるのだ。