決して「スピード狂」向けの車ではない

MT車に乗りなれていない人は、変速操作が苦手という不安があるだろう。変速によるギクシャクした走りは、周りから見ても分かるからだ。それについては、「レブマッチシステム」が助けてくれる。これはドライバーがギアを変速する際に、エンジン回転数が最適になるように自動的に制御してくれる機能。

一番わかりやすいのは減速時だ。通常、低いギアに変速しようとすると、クラッチをつないだ際に、一気にエンジン回転数が上昇し、強いエンジンブレーキが生じる。しかし、タイプRでは、ギアが変わる前に最低なエンジン回転数に合わせてくれるので、スムーズなシフトチェンジが行えるのだ。

だから、マニュアル車での急速なシフトダウンの際に使われる「ヒール&トゥー」という技も必要ない。だれでも上手にマニュアル車が操れてしまうのだ。これはサーキット走行でも便利な機能だが、日常運転でも活躍してくれるので、マニュアル車が不慣れな人も運転しやすく、楽しいと思えるのだ。

シフト・レバーを操作するという一連の動作はスポーツ・ドライビングの楽しみのひとつ
筆者撮影
シフト・レバーの操作はスポーツ・ドライビングの楽しみのひとつ

シートに体が押し付けられるような加速

またクラッチ類も重くないので、半クラ操作もしやすい。また多くの人が苦手とする坂道発進では、電動パーキングブレーキが活躍。クルマが動き出すと、自動的にブレーキを解除してくれる。このようにシビックタイプRは、誰でもラクチンに運転できるMT車でもあるのだ。

しかし、それは世を忍ぶ仮の姿ともいえる。アクセルを全開にすれば、シートに体が押し付けられるような加速を見せ、瞬時に次のギアへのシフトアップが求められる。やはり、FF最速の称号はだてでない。

シビック購入後、走りの楽しさを知ってサーキットデビューする人もいるという
画像=本田技研工業提供
シビック購入後、走りの楽しさを知ってサーキットデビューする人もいるという

だから、タイプRを公道で乗る際は、その性能を抑制させる心のブレーキが必須だ。もちろん、速く走らせなくとも、刺激的なエンジンサウンドやガチッガチッとシフトチェンジするたのしさがあるため、クルマ好きの心を高揚させてくれる。実に、ホンダらしい情熱的なクルマなのだ。