取材を受けるときや編集者との打ち合わせには、切り離して好きなところに挟める小型のレポート用紙を持参する。
「質問に答えるうちに、頭の中が整理されてすっきりすることがあるでしょう。一見関係のない事柄が結びついて『あぁ、そういうことか』とわかる。こうした気づきを書き留めておくと役に立ちます」
最近は、出版企画用のノートも持ち歩いている。ビジネス書でベストセラーを連発する小宮さんには、執筆の依頼が引きも切らない。以前は手帳のうしろのメモ欄を使っていたが、さすがに間に合わなくなって専用のノートをつくったのだ。
ノートを開くと、各見開きに「数字に強くなる」「新聞の読み方」といったテーマが書かれている。章タイトルのようなものが書き込まれたページもあれば、大小さまざまなメモが挟まれているだけのページもある。某社の取締役会の議案書の裏に走り書きしたメモも。関連データなど、思いついたことがあれば随時書き加えるが、すでに出版された企画のページの書き込みはそれほど多くない。
書籍の企画としては大雑把な気もするが、「これだけで十分1冊書ける」とか。
「普段から、それぞれの項目について講演で話していますからね。逆に言えば、新たに勉強しなきゃいけないようなテーマは本にしません。学生のレポートじゃないんだから、読者に失礼でしょう」。頭の中にしっかりと入っているから、手がかりとなるキーワードさえあれば、苦もなく中身が引き出せるのだ。
会議の内容を記録するときも、メモするのはポイントだけである。「本質を捉えているから、ポイントがわかる。若い人がやたらとメモを取るのは、ポイントを見極められないため。でも、若いうちは仕方がない。僕にもそんな時期がありましたよ」。
(澁谷高晴=撮影)