写真も同様で、撮ったものをじっくり眺めているうちに、撮影時には気づかなかったことが「見えてくる」。「まさに『眼光紙背に徹す』。着目すべきポイントが浮かび上がってくるんです。それをキャプションとして写真に書き加えることで、記録が立体的になります」。
理解したものを図や絵で表すことも欠かせない。こうして2、3週間かけて検証を重ね、「考えをつくっていく」のだ。文章にまとめるときは、抽出したキーワード(タネ)をくくって上位概念を導き出し、それを結びつけて全体像を描く(構造化)。この編集作業を経て、畑村流ノート術の集大成ともいえる「見学記」が出来上がるのである。
「構造化するとき、思考展開図をつくってスタッフとディスカッションをすることもあります。いわば“知的なチャンバラ”。そうやって試行錯誤を繰り返すと、いいものができる。自分の頭の中を覗くようなものだから、あまりいい気持ちはしませんけどね(笑)」
見学の印象記は40年にわたって書き溜めていたが、完成度が低く、「全体像をもっとしっかりつくらなければもったいない」と思うようになった。そこで10年ほど前から、現在のような形で「見学記」をまとめるようになったという。「物事の科学的な理解には、要素の摘出とその構造化が必要。そこでキーワードの書き出しが重要になるんです」。
経営コンサルタントの小宮一慶さんの場合は、もっと気軽にメモを取る。自称「メモ魔」。手帳や宿泊先のホテルの便箋など、手近なものに、思いついたことをすばやく書き留めるのだ。
「新しい企画や、連載中の記事のアイデアなどは、散歩中にひらめくことが多い。なので、忘れないうちにキーワードだけメモしておくんです」
歩いたり、場所を変えることが脳を刺激し、ひらめきを生む。その機会を逃さないため、メモは必携である。