納期を守るためなら何でもやる

こうして一からやり直している間にも、納期はどんどん迫ってきます。突然の軌道修正に悪戦苦闘しているうちにやって来るのが「Point of No Return」、つまり「最終期限から逆算して、もう軌道修正も後戻りもできない段階」です。

ここをこえると、あとは期限に間に合わせるために、深夜残業や徹夜を続けてでも大量の作業を突貫工事でやるしかなくなります。時には、本来この仕事とは関係のない人まで駆り出して、人海戦術を繰り広げます。

その時の活動レベルをグラフで確認してください。本来の上限値を完全にこえています。

これが俗にいう「デスマーチ」の状態です。

ミーティングで眠る人々
写真=iStock.com/YinYang
※写真はイメージです

こうして修羅場をかいくぐり、死力を尽くして何とか期限までに納品すると、活動レベルは一気にゼロになります。

その少し後にちょっとだけ活動レベルが上がっているのは「打ち上げ」です。ここでメンバーたちがお互いの苦労をねぎらい、プロジェクトは解散となります。

これが日本の職場における典型的なプロジェクトの失敗パターンです。皆さんの中にも、まったく同じ経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。

会社にとっても個人にとっても不幸

このパターンで何が問題かといえば、プロジェクトが本来目指していた目標を達成できずに終わってしまうことです。

Point of No Returnをこえてからは、「納期を守るためなら何でもやる」という状態になってしまい、プロジェクトで本来目指していたはずの「品質」はなおざりにされます。

また、余計な「コスト」もかかります。

例えば資材を発注するのも、「2週間後の納品なら10万円だが、3日後の納品だと特急料金として20万円かかる」と割増料金を要求されることが多くなります。スケジュールに余裕があれば、コンペをして複数の取引先を比較検討し、最も安い価格の資材を選ぶこともできますが、スピード最優先の見切り発車ではそれも不可能です。

また、突貫工事が続いてメンバーの残業や休日出勤が増えれば、その分だけ人件費もかさみます。会社のコストが増大するだけでなく、連日の徹夜を強いるような働き方は個人にとっても幸せではないでしょう。