決して能力や意欲が低いからではない

私も多くの日本企業から、「うちの会社では誰もプロマネを志望しないし、人材も育たない」と相談を受けてきました。

それは決して日本のビジネスパーソンの能力や意欲が低いからではありません。権限がないのにリスクだけ負わされるプロマネというポジションが、貧乏くじでしかないからです。

つまり日本の会社の大半は、プロマネが本来の職責を果たせない組織構造になっているところに問題があるのです。

新規事業のプロジェクトの成功率が低いワケ

新規事業のプロジェクトも、日本企業における成功率は極めて低いのが現状です。

大企業でよくあるのが、社内のコンペやビジネスプランコンテストで選ばれたテーマをプロジェクト化し、アイデアの提案者にプロマネを任せるケースです。

この場合、スタート時には役員レベルが何人も後ろ盾について応援してくれます。

ところが、途中からプロジェクトの雲行きが怪しくなったり、自分が管轄する部門に不利益となる事態が発生した途端、役員たちはさっさと手を引いて逃げ出します。

支援者を失ったプロマネは、必要な人材や予算などのリソースを失い、プロジェクトは完全に頓挫します。

三木雄信『仕事が速いチームのすごい仕組み』(PHPビジネス新書)
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メンバーからは突き上げをくらい、チーム内は混乱に陥ったまま、最終的に中途半端な状態でプロジェクトは解散に至ってしまう……。これが典型的な失敗パターンです。

さらにひどいのは、プロマネ一人が失敗の責任を負うことになり、プロジェクトが終わってからも周囲からの評価は下がったままになってしまうことです。

スタートの時点で、後ろ盾についた役員が「もし失敗しても責任は自分がとる」と明確にしていれば、この事態は回避できるはずです。

ところが日本のプロジェクトは、権限や責任の所在が曖昧なまま進むので、いざ問題が起こった時に結局プロマネが泥をかぶることになります。

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