なぜ同じ失敗を繰り返すのか
たとえ納期は守れたとしても、品質もコストも目標を達成できなかったとすれば、そのプロジェクトは失敗と言わざるを得ません。
納期後の活動が、打ち上げだけというのも問題です。ただお酒を飲んで「お疲れさま」と言い合うだけでは、プロジェクトを通して得た資産や知見が組織の中に蓄積されません。
これだけ苦労してプロジェクトをやり遂げたのですから、メンバーはそこから多くのことを学び取っているはずです。その貴重な財産をノウハウとして以降のプロジェクトに生かすことができれば、こんな失敗パターンを繰り返さずに済みます。
しかし実際は、特に反省や振り返りをする機会は設けられず、せっかく得た知見も忘れ去られてしまっているのです。
目標を達成できず、あとに何も残らない。
こんな失敗プロジェクトを繰り返しているうちは、日本の企業が高い成果を出し、ビジネスを成長させることはできないでしょう。
孫正義でも従業員に逃げられる
プロジェクトを実行するたびにデスマーチに陥っていたら、誰もプロジェクトに関わりたくないと考えるようになります。
私が在籍していた頃のソフトバンクも、同じ状況でした。
「Yahoo!BB」のプロジェクトを立ち上げた時、孫社長は人事部に「今日の夕方5時までに、社員を100人集めろ!」と指示しました。
そして本社やグループ会社から集められた100人の前で、孫社長は「ソフトバンクは第2の創業のつもりで、このプロジェクトに社運をかけて取り組む。ここに集まった人たちはメンバーとして参加してもらうので、全員名刺を置いていけ!」と熱く語りかけたのです。
ところが、名刺を置いていったのは数十人で、多くの社員は名乗らないままその場から立ち去りました。うち10人ほどは、孫社長の目を盗み、非常階段から走って逃げたほどです。その様子を見ていた私は、まるでマンガみたいだと笑ってしまったくらいでした。
この頃のソフトバンクは、新しく立ち上げたものの結局事業として成立せず終わってしまったプロジェクトが相次いでいて、「孫社長のプロジェクトには参加したくない」と考える社員が増えていた時期でした。
孫社長ほどのリーダーであっても、成功率が下がれば人に逃げられてしまうということです。
プロジェクトのメンバーになることさえ嫌がられるのですから、ましてや現場の責任を背負うことになるプロマネなど、誰も引き受けたがらなくて当然です。