「タウリン」は様々な効果を持つスーパー栄養素
私が最初に魚のタウリンの効果に気づいたのは、40年以上も前に島根医科大学(現・島根大学医学部)で研究をしていた時です。島根県は当時、長寿地域と短命地域がくっきり分かれており、隠岐島は島根県の中で脳卒中が少ない長寿地域でした。一方、山間部に入ると脳卒中が増え、短命になります。長寿地域との大きな違いは、タウリンでした。
隠岐島の方は魚を食べている量が多く、タウリンの排泄量が多かったのです。タウリンは、実に様々な健康効果を持つ「スーパー栄養素」です。たとえば、交感神経の緊張を鎮めてストレスや血圧を下げる効果があります。また、胆汁を増やしてコレステロールや脂肪の排出を促すので、脳卒中や心筋梗塞などのリスクを下げます。
さらに、障害を受けた膵臓からのインスリン分泌を促進するので糖尿病の予防にもなります。実際に世界調査で調べ、男性の24時間尿のタウリンの量と心筋梗塞の死亡率との関係を地域別に表したデータがあります。それが図表1「心筋梗塞の年齢調整死亡率と尿中タウリン排泄量」です(心筋梗塞死は若い方の死亡も多いので、その死亡率が高いと平均寿命は短くなります)。
世界で最もタウリンの排泄量が多い、つまり魚をたくさん食べているのが日本です。次に、スペイン、ポルトガルなどの地中海諸国です。そして、タウリンの排泄量が多いほど、見事に、心筋梗塞の死亡率が低くなっていることがお分かりいただけると思います。
もう一つ、魚に特徴的な栄養素として、オメガ3脂肪酸があります。
EPAやDHAと呼ばれるこれらの脂肪酸にも、血液サラサラ効果や、中性脂肪、コレステロールを抑える効果があります。血中のオメガ3脂肪酸の割合と心筋梗塞死亡率との関係を調べた調査でも、血液中のオメガ3脂肪酸が6%を超えると、死亡率がぐっと減ることが分かっています。これらの健康効果を得るために必要な魚の量は、1日に80~100グラム程度。切り身一枚程度の量ですから、ちょっと気を付けるだけで、無理なく摂れます。