アメリカで「集団一斉授業」に「オンライン個別学習」を融合(ブレンド)する「ブレンディッド・ラーニング」が大きな成果を上げつつある。『ブレンディッド・ラーニングの衝撃』(教育開発研究所、小松健司・訳)の共著者であるマイケル・B・ホーン氏は、「アメリカでは、非常に多くの生徒が、公立校に代わる『ブレンディッド教育』系の学校を選ぶようになっている」という――。(後編/全2回)(取材・文=NY在住ジャーナリスト・肥田美佐子)
「工場型一斉授業」からの脱却が必要
――知識経済が拡大し、世界が急速に変わる中、従来の標準化された「工場型一斉授業」はもはや就職に役立たず、子供たちが21世紀を生き抜くだけの知識やスキル、創造性は身に付かないというのが、あなたの主張です(前編)。
「習熟度基準学習」という概念に基づき、一人ひとりの子供たちがオンライン学習で勉強の主導権を握り、自分のニーズに合ったペースで学び、一つのことを確実に習熟してから次に進むのがいい。これが、オンライン学習を通常の授業と「ブレンド(融合)」した「ブレンディッド・ラーニング」だ。
ブレンディッド・ラーニングは、生徒を(学年や能力で)「分類」して一斉授業を行う従来の教育モデルとは一線を画する。教室での授業とは別に、各生徒が監督者の下、自宅以外の場所で(ビデオ講義の聴講や自習アプリなど)、オンライン学習というテクノロジーを使い、一人ひとりのペースで個別に学ぶ。
ブレンディッド・ラーニングの目的は、「人間としての能力」を伸ばし、高めることにある。従来の黒板を電子ホワイトボードに置き換えるなど、テクノロジーを導入しさえすればいいというものではない。デジタル化を図っても、工場型一斉授業を続けていては意味がない。ここが重要な点だ。
各生徒がオンライン学習で学び方をカスタマイズし、潜在能力を発揮し、複雑な現代社会でキャリアを築いていけるだけの創造性を培っていく。こうした教育モデルが普及すれば、世界の学校が一変する。人工知能(AI)というゲームチェンジャーがこれに加われば、さらに大きな変革が起こる。