日本の学校教育にはどこに問題点があるのか。アメリカで教育に関する講演やメディア出演をこなすマイケル・B・ホーン氏は「この半世紀で、学校のパーパス(存在意義)は変わった。教師が教壇に立ち、子供たちに一斉に知識を与える従来型の授業方式はもうやめるべきだ」という――。(前編/全2回)(取材・文=NY在住ジャーナリスト・肥田美佐子)
マイケル・B・ホーン氏
撮影=Jay Premack
マイケル・B・ホーン氏

日本の授業は先生がずっと話し続けている

――何年か前、英語教育関連の視察で渡日し、複数の公立校を回ったそうですね。日本の学校について、どのような気づきがありましたか。

東京など、複数の都市の小中学校を回ったが、まず、日本の家庭が、アメリカの家庭より教育を重視していることがわかった。学校の授業だけでなく、課外プログラムや塾も含めてだ。

次に感じたのが日本の教育制度の閉鎖性だ。海外の大学や留学にさほどベクトルが向いておらず、非常に「内向き」だと感じた。外国に行くことに熱心な韓国や中国とは対照的であり、その違いに衝撃を受けた。英語を学ぶことの価値が日本文化に根づいているようにも見えなかった。英語を勉強しなければ、という一種の義務感はあるかもしれないが。

また、授業中、先生が教科書を使って延々と話し続け、生徒たちが一斉に教壇を見つめている姿が印象的だった。もちろん、コロナ禍を経て変わった点もあるとは思うが、少なくとも私が視察した時は、先生がずっとしゃべっているような印象を受けた。一方で、生徒がじっと聞いている姿に、教師という存在を重んじる日本の伝統を感じた。

「工場型一斉授業」は役に立たない

――日本の学校では、生徒が受け身で講義を聴く「工場型一斉授業」が主流です。あなたは、米教育界で話題をさらった共著『ブレンディッド・ラーニングの衝撃(注)の中で、「ただ出席するだけ、ただ起きているだけ」で評価される「工場型一斉授業」はもはや就職に役立たない、と指摘していますね。

注:『ブレンディッド・ラーニングの衝撃「個別カリキュラム×生徒主導×達成度基準」を実現したアメリカの教育革命』(教育開発研究所、著者:マイケル・B・ホーン、ヘザー・ステイカー、小松健司・訳、2014)

最も大切なのは、学ぶこと自体が生徒たちにとって面白くなるような方法を見いだすことだ。家族や社会の期待に応えて勉強するのではなく、生徒たちが「勉強って本当にエキサイティングで楽しい!」と思えるような授業の仕方を編み出すことが最大の課題だ。

そのためには、工場型一斉授業から一歩踏み込んだ教え方にしなければならない。その点で、オンライン学習を通常の授業と「ブレンド(融合)」した「ブレンディッド・ラーニング」(注:後編で詳述)は効果的だ。

工場型一斉授業を「『ただ起きているだけ』で評価される」と書いたが、実際のところ、課外プログラムで忙しく、授業では居眠り寸前の生徒たちもいる。教室では起きていられなくても、課外プログラムには熱心に取り組み、重要な事柄を学び、知識を習得しているのだ。

とはいえ、今日の世界では、もはや知識の習得だけでは足りない。それを応用してリアルなスキルにつなげ、そのスキルを磨き、うまく活用できるようになることが大切だ。