理解する速度が違う子供たちをどう同時に教えるか

――「ブレンディッド・ラーニングの出現は、オンライン学習がより上位の市場に普及する過程の一つ」だと、共著『ブレンディッド・ラーニングの衝撃』の中で指摘していますね。

マイケル・B・ホーン、ヘザー・ステイカー『ブレンディッド・ラーニングの衝撃』(教育開発研究所)
マイケル・B・ホーン、ヘザー・ステイカー『ブレンディッド・ラーニングの衝撃』(教育開発研究所、小松健司・訳)

20年前のオンライン学習を思い出してほしい。PDFなどの電子文書は行き交っていたが、対話型ではなかった。単調で面白みに欠けたため、最もモチベーションが高い人々しか続かなかった。

一方、現在のオンライン学習は「破壊的イノベーション」にあふれ、質の向上が著しい。対話型になり、学習者が理解を深められるよう、よりカスタマイズできるようになった。

こうした進化は学校外での自主的なオンライン学習に限ったことではなく、学校のオンライン学習にも言えることだ。この点が重要だ。自発的に学ぶタイプの子供たちがいる一方で、多くの子供たちはそうではないからこそ、仲間や先生に(対話を通して)導かれながら学ぶことが理解に役立つ。

従来の授業は、学習ペースが速い子供にとっては退屈でしかない。そうした子供たちは、もっと深掘りした内容を学ぶほうがいい。

一方、授業がわからない子供も多い。その前段階を理解していないからだ。そうしたギャップの解消に役立つのが、学習内容をカスタマイズできるオンライン学習だ。先生が万策を尽くしても、生徒間の習熟度の差を埋めるのは至難の業だが、オンライン学習では各生徒が自らカリキュラムを作り、テクノロジーを家庭教師代わりにして学べる。

オンライン学習には、従来の授業とは大きく異なる「バリュープロポジション(価値提案)」がある。つまり、オンライン学習でしか提供できない価値のことだ。

教育には課外活動や友達との交流も必要不可欠

――アメリカの生徒や保護者は、従来型の授業も望んでいるそうですね。そのため、ブレンディッド・ラーニングが2000年前後に急速に広まった、と。ブレンディッド・ラーニングでは、友人らとの交流や遊びという楽しみも確保できるのですよね。

コロナ禍でオンライン学習が一気に浸透し、「自分のやり方やペースで、いつでも勉強できる」点がいいという子供たちの声を聞く。一方、教室で仲間たちと触れ合いたい、友達が恋しいという声も耳にする。ブレンディッド・ラーニングでは、その両方が可能だ。

勉強は楽しく社会的なものであるべきであり、従来の授業や課外活動、仲間との交流を子供たちに断念させるようなものであってはならない。