「回転売買」に手を染めてきた証券会社の歴史
仮に宣伝を強化して口座を増やしたとしても、収益構造上の課題も大きい。金融商品の売買を仲介し、手数料を徴収する業態のことを証券業界ではブローカレージと呼ぶが、この業態は典型的な薄利多売のビジネスである。
比較的余裕のある高齢者が今の証券業界の主要顧客だが、それでも営業マンが顧客に株式の売買を強く推奨し、何度も取引させるという、いわゆる回転売買を行わないと十分な手数料を得ることは難しい。
既存の証券会社はかつて、顧客に半ば強引に株を売買させて手数料を稼ぐ手法で、何度も社会的批判を受けてきた。だが回転売買をやめると業績が低下するので、再び回転売買に手を染めるという歴史の繰り返しだった。
資金のない若者では商売にならない
こうした経緯から、資金を持っていない若年層ではとても商売にならないと予想する関係者は少なくなかった。今回の証券業務撤退は、日本において、若年層を相手にブローカレージのビジネスを成立させることがいかに難しいのか、改めて知らしめる結果となってしまった。
ちなみにLINEは証券業務からは撤退するものの、FX(外国為替証拠金取引)については継続する方針だという。FXの場合、投機的な利用者が多く手数料を確保しやすいことに加え、顧客に資金を貸し付けて売買させる信用取引が中心なので、利子収入も期待できる。
回転売買と貸し付けによって顧客から多額の収入を得られる数少ないサービスかもしれないが、基本的に短期売買が中心であり、国民の長期的な資産形成には寄与しない。厳しい言い方になるかもしれないが、結局のところ、回転売買で強引に手数料を稼ぐFXしか残らなかったのが現実である。
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら