最初のハードルさえ越えれば、スムーズに進む
応用行動分析学には、行動連鎖という概念があります。日常における行動というのは、小さな行動がドミノ倒しのように連続的に生じることで成立しているという考え方です。
たとえば、「アメをなめる」行動を考えてみましょう。
「たくさんのアメが入っている袋を開ける」→「袋からアメをひとつ取り出す」→「アメを個別に包んでいる包装を開ける」→「中のアメを取り出す」→「アメを口の中に入れる」→「舌を使ってアメを口の中で転がす」という一連の行動が滞りなく連鎖することによって、ようやくアメの味を楽しむことができます。
私たちが日常の中で行なう行動の多くが、行動連鎖によって成り立ちます。行動連鎖は、最初の行動が始まらなければその後の行動が生じないことになります。
逆に言えば、最初の行動さえ起こせれば、その後の行動連鎖は流れのままに生じてくれます。
肝心なのは、行動の始発です。
打率が低くても、打席に多く立つ選手が強い
行動の始発が問題なら、その行動を細分化して行動連鎖の最初の行動を標的とするのが一番の手です。
たとえば、パソコンを使った作業の場合は、パソコンを立ち上げることが最初の行動、つまり標的行動です。ノートパソコンを使うのであれば、ノートパソコンをカバンから取り出して開くことが標的行動になります。
つまり、いつも先延ばししている作業がある場合、その作業をやるかどうかはともかく、パソコンを立ち上げることを標的にして、「立ち上げることができれば良しとして問題ない!」と私は言いたいのです。
パソコンを立ち上げても、作業しないなら意味がないと思われるかもしれません。
しかし、パソコンを立ち上げたうちの3回に1回でも作業に取り掛かれたなら十分な成果です。
3回のうち2回は作業をしないわけですが、野球では打率3割のバッターはとても優秀とされます。先延ばしの多い人なら、4回に1回の割合で作業できたらすごいことです。
打率が低くても、打席に立つ回数を増やせば安打の数は増えます。パソコンを開く回数を上げれば、作業に取り組む時間も長くなります。単純な話です。