「マインドワンダリング」は自然な反応
夜、布団に入ってからなかなか寝付けないという人の中には、寝る前にいろいろなことを考えすぎてしまって眠れなくなるというタイプの人もたくさんいます。「あの時、ああしておけばよかった」「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」など、過去を振り返って反省したり後悔したりすることもあれば、「今日引き受けた仕事は、この先大丈夫だろうか」「来週のプレゼンはうまくやれるだろうか」と、未来について考えて不安になったりすることもあるでしょう。
こうした、過去を振り返ったり未来を不安に感じたりと、頭の中でぐるぐる考えてしまう「マインドワンダリング」は、自然な反応ですし、考えること自体は悪いことではありません。ただ、そこで「考えていても仕方がない」「何とかなるだろう」と思えれば、そのうち眠りにつけますが、止まらなくなると睡眠を妨げてしまいます。
眠れないのは人間の防衛本能
私たちは1日のうち、落ち着いて自分の内面に目を向ける時間というのはほとんどありません。日中、職場にいる時はもちろん、通勤途中に道を歩いている時も、視点が外に向いていますし、意識が外に向かざるを得ません。脳はかなり活性化させられています。
家に帰ってからも、家事や子どもの世話などがあれば、意識が自分の外に向いている状況は続きます。布団に入って初めて、自分の内面に目を向けられる状態になります。脳が「デフォルト・モード・ネットワーク」になるのです。デフォルト・モード・ネットワークとは、車で言うところの、エンジンはかかっているけれど、走行はしていない「アイドリング状態」。ぼんやりとして、安静な状態です。そして、過去を振り返って反省したり、未来に起こりうることを考えてしまうのです。
デフォルト・モード・ネットワークになると、日中にあった出来事が整理されるといったメリットがありますが、反省や後悔が止まらなくなったり、不安が大きくなったりすると、眠れなくなってしまいます。人間は、恐怖や不安といったネガティブな感情を抱えていると、眠れないようにできているからです。
現代は、寝ている間に猛獣に襲われたりすることはありませんが、眠っている時は非常に無防備なので、大昔であれば、ともすれば死に直結してしまいます。ですから、不安が残っている状態だと、「寝てはいけない。不安を解決してからでないと、このまま眠ると危ない」という防衛本能が働くのです。