「外から内へ」の影響を見逃すべからず

気候変動に対する企業の取り組みを決定し、戦略的機会を評価するためには、ビジネスリーダーは自社の活動が気候に及ぼす影響(内から外への影響)を理解するとともに、気候環境の変化(実際の気候の変化と規制環境の変化の両方)が自社を取り巻くビジネス環境にどのような影響を及ぼす可能性があるか(外から内への影響)を把握しなくてはならない。

内から外への影響を理解するためには、自社のバリューチェーンを仔細に調べる必要がある。

バリューチェーン活動――インバウンド物流、業務、アウトバウンド物流、宣伝、販売、アフターサービス――は、どれもみな二酸化炭素を排出する可能性がある。バリューチェーンの総排出量に対する利益の単純比率は、気候変動が及ぼしうる影響のきわめて有効な測定基準になることがある。

たとえば、新しい規制によって排出量1トン当たり仮に10ドルの価格がつけられたとしたら、それは利益を大きく落ち込ませることになるのか。そればかりでなく、利益をすっかり呑み込んでしまわないか。

「二酸化炭素エクスポージャー(リスクにさらされている額)」は、二酸化炭素排出コストが利益に及ぼす影響に連動して増大する。他のリスクと同様、二酸化炭素エクスポージャーがもたらすのは難題だけではない。そこにはチャンスも隠れている。たとえば林業関係の企業は植林によって大気中の二酸化炭素を減らすことで、木を切り倒して紙や合板をつくることに匹敵する利益が得られるかもしれない。

(文=マイケル・E・ポーター&フォレスト・L・ラインハルト 翻訳=ディプロマット)