戦争長期化に苦しむ国民、革命前夜との共通点
ロシア革命とは、20世紀初頭、専制君主制を敷いていたロシア帝国の崩壊を招いた革命運動だ。第1次世界大戦に参戦した皇帝・ニコライ2世は「汎スラブ主義」(スラブ系民族の連帯・統一を目指す思想・運動)を押し出してロシア軍の総動員を指示。ところが予想に反して戦争は4年以上続くことになった。
敗戦が続いたロシアの国民生活は次第に大きく制限されるようになり、貧困にあえぐ民衆は皇帝への不満を蓄積させた。戦争に人員と資材を投入した結果、農作物の生産から交通に至るまで、ロシア帝国は広範な機能不全に陥った。
1917年3月、食糧事情の改善を訴えるストライキが勃発。これを契機に、戦争反対の声はロシアに大きくこだますることになる。臨時政府の勧告を受け入れる形でニコライ2世は退位を受諾。のちに三月革命と呼ばれたこの運動により帝政は終焉した。同年、レーニンが社会主義国家の樹立を目指した十一月革命と合わせ、ロシア革命と呼ばれる。
この三月革命は、ウクライナ侵攻後の現在のロシアの国内事情と重なる点が多い。専制的な政治指導者が民族主義を謳った戦争をけしかけるが、予想を超えて長期化。それに苦しむ民衆の不満が蓄積している構図は、現在と驚くほど似通っている。
「北朝鮮モード」で総力戦体制を求める
さらに、プリゴジン氏が訴えようとしたのは、「総力戦体制への移行」と「ウクライナを過小評価しないこと」だった。
ニューヨーク・タイムス紙は、「ワグナー・グループは、ロシアが総力戦体制に移行しなければ大惨事になると予測」と題する記事で、動画の内容を考察している。
同記事は、プリゴジン氏の以下の発言に注目する。
「私たちは北朝鮮のような環境の中で数年間生活する必要がある。そのために、新しい道路やインフラ施設の建設をやめ、戦争のためだけに働く必要がある」
ロシア革命の再発を阻止するためには、ロシアの「エリート」たちが一層戦争に本腰を入れ、戒厳令を敷いた「北朝鮮モードを実行」しなければならないと説く。さもなくばウクライナ戦争でロシアが敗北を喫するおそれもあると訴える。
「ウクライナは世界最強の軍隊」と絶賛
プリゴジン氏は、約5万人の囚人を兵士として雇用したものの、うち約20%がすでに戦闘で死亡したことを明らかにし、ウクライナの戦力を過小評価しないようにとも警告している。米CBSは以下の発言に注目した。