通称「南御堂(みなみみどう)」。華やかな大阪・御堂筋沿いの真宗大谷派難波別院には、山門を兼ねた17階建てのビルがある。ホテルなどが入居し、インバウンド旅行者に大人気だ。歴史ある寺院は2011年の東日本大震災後、耐震性の問題が浮上。解体・補強などの総事業費は90億円超で、単独での再建を断念した寺院が編み出した妙案と、令和式の寺院経営スキームとは。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんがリポートする――。

御堂筋のランドマークは寺の門とホテルが一体

少し前に、本コラムで「ホテルと本堂を一体」させて再建に成功した京都の古刹を紹介した。実は、大阪市では「寺の門とホテルが融合」した事例があった。

それは、2019(令和元)年秋にオープンした真宗大谷派難波別院(通称:南御堂)。日本で初めての寺院の山門と商業施設とが一体となった建物だ。山門の老朽化に伴う建て替え資金の捻出のための「苦肉の策」だったが、これまで仏教と接点がなかった若者やビジネスパーソンが寺の門をくぐりはじめた。

大阪を代表するオフィス街、本町。オリックスや竹中工務店などの本社ビルが立ち並ぶこのエリアに、低層部が大きく開口したビルが登場したのが、コロナ禍前の4年前のことだ。これが、難波別院の「山門」である。

御堂筋を挟んで、山門とホテルが一体になった南御堂がみえる
撮影=鵜飼秀徳
御堂筋を挟んで、山門とホテルが一体になった南御堂がみえる

御堂筋から山門越しに、寺の本堂が見える。難波別院は「お東さん」と呼ばれる真宗大谷派の、大阪における拠点道場だ。気になるのは、「山門とホテル」の合体ビルがいかに完成し、どのように活用されているかだが、それは後述することとして、この界隈の街と寺院の歴史を簡単に解説してみたい。