心を健康に保つにはどうするといいか。健康・科学専門のジャーナリストであるマックス・ルガヴェア氏と医師のポール・グレワル氏は「小麦に含まれるグルテンによる腸の内壁の損傷が、倦怠感やうつ、不安の症状などの一因になるということがわかってきた。グルテンを極力摂らない食事を心がけることが大切だ」という――。
※本稿は、マックス・ルガヴェア、ポール・グレワル『脳が強くなる食事 GENIUS FOODS』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
「忘れられた臓器」と呼ばれる腸内細菌
私たちは細菌なしでは、おそらくどこにも存在しないだろう。皮膚や耳、体毛、口のなか、性器、そして腸には無数の微生物がいる。かつて無菌だと考えられていた肺や乳腺なども、微生物の高級カントリークラブであることがわかっている。
この単純な単細胞生物の遺伝情報の集合体は、一般的に「細菌叢(マイクロバイオーム)」と呼ばれている。
あなたの体外には、そこらじゅうに細菌がいるが、あなたが保有している細菌のほとんどは腸に住んでいる。それが、あなたの腸のマイクロバイオームだ。マイクロバイオームは、たとえば体内の免疫システムを正常に保ったり、食べ物から栄養素を取りだしたり、ビタミンなどの重要な化学物質を合成したりと、広範囲の仕事をしている。
意外に思うかもしれないが、腸もやはり脳と密接につながっている。マイクロバイオームは気分やふるまいと関係があり、脳との直通電話ともいうべき迷走神経を通して、脳とコミュニケーションを取っている。
また、さまざまな化学物質をつくり、それを血流に乗せて脳にメッセージを送ったりもしている。こんなふうに細菌たちはきちんと家賃を払って私たちの身体を間借りしているのに、それに見合った評価をしてもらえていない。科学者たちが、この無数にうごめく遺伝物質のかたまりを、「忘れられた臓器」と呼ぶのも無理はないかもしれない。