千葉の君津に豚骨ラーメン店ができたワケ
専門家に取材して記事にしたこともあるが、ご当地ラーメンの成り立ちは、大きく2つに分かれるという。
(1)「ご当地由来」(人気店追随)型
(2)「チェーン店由来」型
それぞれ補足説明すると、(1)では、各地域に「元祖」と呼ばれる個人店があり、それを模倣する形で店が増えて地域文化となっていった。
最も有名なのは、豚骨ラーメンの久留米市(福岡県)で、戦前に開業した「南京千両」が元祖で、その後に屋台発祥の「三九」の味が評判となり、地域に広がったといわれる。
(2)の象徴が、昭和時代の最強チェーン「どさん子ラーメン」だ。現在も町中華として健在だが、運営会社が変わった。往時の店は、最盛期には1157店(記録に残る店舗数値)もあり、当時まだなじみが薄かった味噌ラーメンを全国各地に広めた立役者だ。
「スガキヤ」の味が浸透した愛知県も、(2)のチェーン店由来型だ。
なお、これ以外には「文化移植系」ともいえる現象があった。昭和時代、大企業の工場建設で多くの人が移住して“郷土の味”が根づいた例だ。
代表的なのは新日鐵(当時)が製鉄所を新設し、2万人規模の従業員・家族が八幡製鉄所(福岡県)から移住した千葉県君津市。君津には、豚骨ラーメン店が開店していき、当時はリトル九州ともいえる食文化が生まれた。だが、今では往時の勢いがない。
70年以上、スープの味は変えていない
コロナ前、札幌出張の際にご当地ラーメンを食べようと思ったが、以前に比べて「味噌ラーメン」を掲げる店が減り、豚骨ベースの店が増えたと感じた。
だが、専門家に聞くと「もともと札幌は豚骨ラーメンの文化で、ご当地の味噌味もベースは豚骨が多い。味噌がブレンドされるので、種類では味噌ラーメンになる」という。
最近取材した冷凍ラーメンの開発関係者からは、こんな話を聞いた。
「近年は好まれる味が多様化してきました。魚介や豚骨のみを使ったシングル出汁はウケず、○○ベースに△△や□□を足すといったブレンド出汁が多く、総じて濃厚な味が好まれています」
その意味で、70年以上前に「魚介と豚骨のWスープ」を開発した「スガキヤ」は先進的だったのか。これだけ消費者の舌が肥えた現代でも、味はほとんど変えていないという。
ちなみに日本全体では、しょうゆラーメンが一番人気で、豚骨は麺のかたさへのこだわりも含めてヘビーユーザーが多いそうだ。