「弱すぎる日本円」と「強すぎる欧州通貨」の関係はどうなるのか
結局のところ、現状では、問題を抱えながらも、金利を上げることができる国の通貨は買われているわけだ。つまり、今の外為市場は「金利ラリー」の状態にある。
こうした状況が今後も長期にわたって続くとは考えにくいが、投資家が「金利」を追い求めている以上、金利が上がらない日本円が売られるのは当然の帰結ということになる。
ヨーロッパでは、英国でもEUでも、中銀による利上げが続いている。一方で、こうした金融引き締めの流れを受けて、さまざまな市場で調整色が強まっている。
代表的なものに不動産市場がある。それまで上昇が続いた不動産価格が住宅を中心に下落ピッチを強めており、今後は銀行の不動産向けローンの不良債権が増えていくと予想される。
金融不安の広がりで、日本円は注目されることになる
不良債権の増加は、銀行の経営を圧迫する。かつてに比べると、銀行の自己資本は潤沢で、不良債権の流通市場の整備も進んだ。そのため、銀行が本格的な経営不安に陥る確率は低い。そうはいっても、投資家が疑心暗鬼となれば、金融不安が瞬く間に広がることを、われわれは「SVBショック」というかたちで目の当たりにしたばかりである。
欧米では、2010年代を通じて緩和一辺倒だった金融政策が、この1年で急速に引き締められた。
こうした金融環境の激変が起これば、欧米で金融不安の火種がくすぶり始めるのは当然のことだ。仮にその火が大きくなり、金融不安が本格化した時に、日本円はどの程度買い戻されるかが、日本円の真の信認を図るうえでのメルクマールになる。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)