TikTokは性的少数者のリストを作っていた
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、LGBTユーザーのリスト作りは、ユーザーの趣向を分析するByteDanceのアルゴリズムによって行われていた。TikTokではユーザーが見たい動画を自身で選択することが少なく、基本的には下にスクロールし続けることで、アプリが選定したおすすめ動画が次々と現れる仕組みだ。
おすすめ動画はユーザーによって異なり、ユーザー自身が過去に視聴した動画の傾向をもとに、人工知能(AI)が好みに合うと思われる動画を提示する。この視聴履歴の分析の一環としてTikTokは、性的少数者であるLGBT向けの動画を多く視聴したユーザーのリストを作成していたという。
TikTokは直接的には、ユーザーに性的指向の開示を求めていない。だが、同アプリに関わった元従業員がウォール・ストリート・ジャーナル紙に明かしたところによると、LGBTなどのトピックごとに、視聴したユーザーを「カタログ化」していたという。
IDごとの性的指向がチェックできる状態だった
さらに問題なのは、ユーザーのIDと動画を関連付け、一部従業員が閲覧できる状態となっていたという点だ。
ダッシュボードと呼ばれる一覧表示ツールを使えば、LGBTなど任意のトピックごとに、関連する動画を視聴したユーザーのIDを一覧表示可能だった。また、IDをもとにユーザーが(例えば「動物好き」や「バイセクシュアル」など)どのカテゴリに振り分けられているかを検索することもできた。例えば、TikTok従業員が知人や興味を抱いた人物のIDを把握していれば、その人の性的指向をチェックすることも可能だったことになる。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、問題のダッシュボードは2022年中に運用が終わったという。だが、TikTokは同紙の取材に対し、ダッシュボードの表示に使われていた元データについて、その管理をアメリカの子会社に移し、より限定された従業員のみが閲覧可能になるよう対策を施したと説明している。
裏を返せば、個人の性的指向を収集したデータは現在も存在し、一部の従業員が閲覧できる状態だった恐れがある。
なぜTikTokはそこまでデータを収集するのか
懸念されるのはリストの流出、それに伴う性的少数者のプライバシー侵害である。親しい家族にさえ開示していなかったはずのセクシュアリティーが、アプリを通じて勝手にネット上に流出する事態ともなりかねない。対象のユーザーが嫌がらせや攻撃のターゲットとなる恐れがある。