※本稿は、川島隆太『子どもの脳によいこと大全』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
簡単な記号を処理するときに脳は最も活性化する
我が子を「頭のいい子」に育てたいと願う親御さんは多いと思います。
そのカギを握る、脳の重要な領域である「前頭前野」。その処理速度を高め、作業領域を大きくするには、いったい何をすればよいのでしょうか。前頭前野を最も活発にさせる刺激を与える――つまり、「学習」をすることです。
私は、脳活動を調べるfMRI(※1)という方法や、脳の血流を調べる光トポグラフィー(※2)といった装置を用いて、「何をしているときに前頭前野を中心に脳がよく使われているのか」について研究を重ねました。
※1 磁気共鳴機能画像法。MRI装置で脳のどこが働いているのかを調べることができる。
※2 微弱な近赤外光を用いて脳の血流を測定する検査。
すると、数字や文字といった簡単な「記号」を素早く処理しているときに(たとえば、「ひとケタの足し算をする」など)、前頭前野が最も活性化することが確認されました。
面白いのは、難しい数学の問題を解いたり、難解で複雑な文字を書いたりしても、前頭前野はさほど活性化しなかった点です。
脳が活性化するとき、脳内の血流が高まる
俗に「脳が活性化する」という言い方をしますが、その状態になったとき、脳内では具体的に何が起こっているのでしょうか。それは「血流の高まり」です。
例えば、「4+2」といったひとケタの足し算をするためには、前頭前野の細胞を働かせることが必要です。そのため、脳を動かすガソリンとなる酸素とブドウ糖を供給するべく、前頭前野の血流が速くなる現象が起こるのです。
ただし、「頭をよくする」には、前頭前野の活性化だけでは不十分です。活性化はあくまで下準備に過ぎず、そのうえで「鍛える」ことが必要不可欠です。
筋トレを行って筋繊維を太く、大きくしていくのと同じように、脳を鍛えることで「脳の体積を増やす」。これではじめて脳の機能が高まります。すなわち、「頭がよくなる」といえるのです。