駅員の大声で思考に集中できずイライラ

とくにうるさいのは新幹線のホームのアナウンスである。絶え間なく同じアナウンスを繰り返す。「○番線ホームに○○行き特急○○が入ります」「自由席は○号車から○号車、指定席は○号車から○号車、グリーン車は○号車と○号車です」「トイレは……」「売店は……」というようなアナウンスを何度も繰り返す。

しかも叫ぶような大声でアナウンスしている。連れと話そうとしても、アナウンスがうるさすぎて相手の声が聞こえない。交互に相手の耳に口を近づけてしゃべるしかないが、それでも聞き取りにくかったりするため、話す気力が失せる。話したいことがあっても、もうどうでもいいといった気分になる。

話しにくいだけではない。考え事をしながらひとりで新幹線を待っているときも、あまりにアナウンスがうるさすぎて、思考に集中できず、イライラしてきて、ついに諦めて放心状態になることもある。

うるさく注意するのはまったくの逆効果

榎本博明『思考停止という病理』(平凡社新書)
榎本博明『思考停止という病理』(平凡社新書)

心理学の実験でも、騒音がうるさい場所では、静かなときなら目に入る物にも気づかないことが証明されているが、騒音は心を閉ざさせるのである。「もう、いい加減にしてくれ」といった気持ちにさせる。その結果、周囲のものごとに対する注意力が散漫になる。

であれば、駅のホームでいくらうるさく注意を促しても、効果がないどころか、まったくの逆効果ということになってしまう。

結局、ていねいすぎてうるさすぎる駅のアナウンスには、言われなければ気づかない心を生み出すという面と、うるさくてものを考える気力をなくさせ注意力を散漫にさせるという面があり、二重の意味で人々を思考停止状態に追いやっているのである。

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