物言う株主に日本市場は狙われている

今回の名誉毀損による損害賠償訴訟は内山氏による逆襲で、同時に、会長職を解任された取締役会の決議は無効であることを確認する訴訟も大津地方裁判所に提訴している。

「今回の事案は、業績もよく内部留保が多い実直な日本のメーカーが海外のハゲタカファンドに食い物にされ、蹂躙じゅうりんされ、ここまでの優良企業に育て上げた経営者が放逐されて崩壊の危機に瀕しているという、まさに事件です。これは一企業の問題ではなく、日本経済全体に関わる現在進行形の由々しき事案であると思い、短期的な利益だけを目的にしているハゲタカファンドからなんとか守ろうと代理人を引き受けたのです」

そう語るのは、内山氏が会長職を解任されて以降、代理人を受任した河合弁護士だ。

河合弁護士は、近年、反原発運動の先頭に立つ弁護士としてメディアに取り上げられる機会が多い。一方、バブル景気を代表する「イトマン事件」など、大型経済事件で勝利を重ねてきた辣腕らつわんでも知られる。河合弁護士は「海外投資家の日本進出には問題も多い」と警鐘を鳴らす。

「近年、海外のアクティビスト・ファンド、いわゆる物言う株主と呼ばれる投資家が日本市場にどんどん乗り込んできています。上場企業を片っ端から調べ上げ、業績が伸びて内部留保も厚く、工場などの資産もある優良企業に狙いを定め、株を買い占める」

社外取締役候補は「“リーチ・ファンド”と呼ぶべき」

「そして経営陣のあることないこと、プライベートまで徹底的に調査し、些細なことを針小棒大に言いつのってガバナンスに問題があると因縁をつけ、仲間のファンドも集めて経営権を奪い取る。

そうして内部留保を取り崩して配当をあげさせ、株価を吊り上げ、短期間で売却して巨額の利益を得る。こうした手法から、内山氏が今回の株主総会で提案している社外取締役候補で、元財務官僚の小手川大助氏は記者会見で『アクティビストというより、“リーチ・ファンド”と呼ぶべきではないか』と指摘しています。

リーチとは英語でヒルのこと。つまり、優良企業に食らいついて好きなだけ血を吸いとってサッと逃げる。フジテックを事実上乗っ取ったオアシスは、まさにそのリーチ・ファンドだとわれわれは見ているのです」

今回の提訴では、前述の通り38件の名誉毀損行為を指摘しているが、その訴状は171ページにもおよぶ。指摘の多くは、前述したオアシス側の『フジテックを守るために』と題したウェブサイトで記述された8項目にわたる内容について。それらはいずれも、内山氏がいかに会社を私物化し、違法かつ不正な行為で会社に損害を与え続けてきたか、と主張している内容だ。