身体が痛い日でも幸福に過ごしている老夫婦の条件

2008年、筆者たちの研究チームは被験者のうちの80代の夫婦に8夜連続で電話をかけた。夫と妻に個別の対面調査を行い、日常生活に関するさまざまな質問をした。調査の目的は、その日の体調や、活動内容、心の支えが必要だと感じたり、そうした支えを得たりする機会があったかどうか、配偶者や他の人々と過ごす時間の長さを知ることだった。

ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(&books/辰巳出版)
ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(&books/辰巳出版)

他者と過ごす時間という単純な尺度が非常に重要であることがわかった。というのも、この尺度は日々の幸福とはっきり結びついていたからだ。誰かと一緒に過ごす時間が多かった日のほうが幸福度も高かった。とくに、パートナーと過ごす時間が長いほど、幸福度が高かった。これはすべての夫婦にも当てはまっていたが、とりわけ仲睦まじい夫婦に顕著だった。

高齢者はたいていそうだが、被験者の男女も身体の痛みや健康問題に日々悩まされていた。当然ながら、身体の痛みが強い日は気分も落ち込んでいた。だが、仲睦まじい夫婦は、気分の浮き沈みがいくぶん緩やかだった。身体の痛みが強い日でも、幸福度があまり下がっていなかったのだ。幸福な結婚生活のおかげで、痛みの強い日も彼らの心は守られていた。

直感でも理解できることかもしれないが、この研究結果から、非常に強力でシンプルなメッセージが見いだせる。他者との交流の頻度と質こそ、幸福の二大予測因子である。

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