帰属感を求める原初の欲求をどう満たすか

例えば、ホモ・サピエンスが何らかの理由で1カ月間1人きりで過ごすことになった場合、体内では前述のプロセスが継続的に作用し、それが絶え間ない不安へと変わり、心身にダメージを与え始める。現代人が言うところのストレスでヘトヘトの状態になる。このとき、このホモ・サピエンスは孤独感を抱いていたはずだ。

今日でも、孤独感は同じように作用する。孤独感とは身体の中で鳴り響く警報のようなものだ。初めのうちは、警報が役に立つ面もある。問題を知らせてくれるしくみは必要だ。だが、来る日も来る日も火災報知機が1日中鳴り続ける家で暮らすことを想像すれば、慢性的な孤独が密かにどんな影響を与えているかがわかるはずだ。

孤独感は、心身バランスに影響を与える人間関係のあり方の1つにすぎない。人間関係という氷山の一角であり、水面下にははるかに多くのピースが存在している。今では、健康と社会的つながりの関係を明らかにする研究が盛んに行われている。

健康と社会的つながりの関係は、物事がもっと単純だった時代、ヒトという生物種の起源までさかのぼる。人が求める基本的な人間関係は複雑ではない。人は、愛、つながり、それから帰属感を必要とする。だが、現代人は複雑な社会の中で生きており、だからこそ、この基本的欲求をどう満たすかが課題になる。

一緒にいると元気になれる人と会った頻度を計算してみる

少し時間をとり、大切に思っているのに十分に会えていない人との関係を思い返してみよう。相手は、恋人や配偶者でなくてもかまわない。一緒にいると元気になれる人、もっと頻繁に会いたいと思っている人なら誰でもいい。候補になりそうな人たちをひととおり思い出し、1人だけを選び、その人物を心に思い浮かべてみる。

次に、その人と最後に過ごしたときのことを思い出し、そのときに感じた気持ちを心の中でできる限り再現してみよう。とことん楽観的な気分がしただろうか? 理解されていると思えただろうか? 笑いが絶えず、自分や世の中の問題がいつもより軽く感じられたりしただろうか?

では次に、その人と会う頻度を考えよう。毎日? 月に1回? 年に1回? 1年間に一緒に過ごす時間を計算し、その数字を書き留めよう。