未完了はあなたのエネルギーを奪う

強烈すぎる未完了は、心のど真ん中に居座り、あらゆるエネルギーを引き寄せ、もうそのこと以外考えられなくなる。母親の一挙手一投足に気を払い、母親のみならず、玄関の向こうにある、見えないはずの世界すら見る必要があった。正気でないどころか、ほぼ錯乱状態である。

それくらい、未完了は精神状態に大きな影響を与える。

ガラスを割る、という当時の私にとって、とてつもなく大きい未完了とまではいかずとも、実は人生において未完了は驚くほど多く存在している。未完了は、たとえ小さなものであっても、確実に引力を発生させる。その一つひとつが、エネルギーを少しずつ奪い、気がつかないところで精神状態に少しずつ影響を与え続ける。

未完了について、大きなものから小さなものまで、実際にどのようなものがあるかを見ていきたい。

人間関係に関する「未完了」

ケース①
朝、仕事に行く前にちょっとしたことで妻と喧嘩になった。その喧嘩は解決することなく、仕事に行かなくてはならない時間となり、不本意ながらも、未解決のまま仕事に行くこととなる。

最初こそムカムカしていたものの、時間と共にすっかり喧嘩のことは忘れてしまった。ところが、ある瞬間にふっと思い出す。「あぁ、帰ったらまたあの会話の続きから始まるのかな」と、気持ちが重くなる。その後しばらくの間、未完了は復活する。そして、その間エネルギーを奪い続ける。

本当に集中しなければならない目の前のことと同じくらい、未完了は集中力を奪い取っていく。この夫婦喧嘩が解決するか、何らかの形でケリがつくまで、頭の片隅に留まり続ける。夫婦喧嘩のような、自分の人生に直接的に関係のあるイベントは未完了を分かりやすく体験できる。しかし、気がつかないような未完了は他にも山ほど存在する。

眉間をもんで、目回りの緊張をほぐそうとしている男性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

ケース②
地元の友達と、「そろそろ、みんなとまた会いたいね」などと盛り上がり、同窓会をやることが何となく決まる。その後、誰が幹事をやるのかも決まらぬまま、なんとなく日々は過ぎていき、年末に「そういえば、同窓会はどうするんだっけ」と、思い出す。以降、毎年年末になるたびに思い出す。

こんな些細なことでも未完了となり得る。未完了は、その大小にかかわらず引力を発生させる。同窓会が開催されるか、同窓会はやらないと決断するまで、未完了は留まり続ける。