属人的な問題である以上に「組織の問題」である
一方で、何が何でも制度を使い切らなくてはという労働環境を考えてみましょうか。
その場合には、社員は自然に働いているのではなく、強制されて働いており、その強制が解除される権利が有給だということになります。だから、強制から逃れるためには、有給を取らなくてはいけないという心理になります。
制度を使う側は、自分の権利を守るためにも、その権利を「使わなくてはいけない」と考える。この場合、労働と休暇は、対立する概念であり、有給休暇は、労働者から搾取している資本家から、労働者が勝ち取った権利だということになります。
こうした考え方自体に私は、反対ではありません。
たしかに、こうした職場は日本のなかに、数多く存在しているのも事実です。ほとんどと言ってもいいかもしれません。
私が言いたいことはこういうことなんです。
「有給制度」を使い切るか、無頓着かということは、属人的な問題なのですが、それ以上に、その人間が属している組織の問題だということです。
闘う必要があるような組織は辞めたほうがいい
組織が、労働者と雇用者を敵対的なものとして捉えており、実際に、労働者から搾り取れるだけ搾り取るという特性を持っている場合には、労働者は自分たちの権利を広げ、自分たちの生活を守っていくために、闘う必要があるでしょう。もしかすると、そんな組織は、辞められるなら辞めてしまったほうがいいかもしれませんね。
反対に、多くの社員が、休む必要があれば休みをとり、しかも必要以上に休みをとらなくてよいほど、仕事におもしろみを感じているような組織というものも想像できるでしょう。まあ、現在の資本主義システムが過剰に働いている会社では、こんな理想的な職場はあまりないかもしれませんが、頭のなかだけでも思い描いてみてください。
この場合には、多くの社員は、有給休暇を意識することなく、自由に働き、休まなくてはならない必要が生じれば、自由にそれを申告することができるわけです。