「高タンパク質食ダイエット」は確実にやせる

最近では、「もしタンパク質がよいなら、多ければもっとよいはずだ」という考えに立つダイエットが流行っている。これもよくある誤った論法で、「よいものはどんなものでも、多ければさらによい」といっているのと同じだ。

有益な物質にも、摂りすぎると有毒になるものはたくさんある。塩、水、ビタミンなどがそうだ。同じことがタンパク質や、炭水化物、脂肪についてもいえる。高タンパク質食ダイエットが流行り始めたのは、しばらく前のことだ。

この考えを広めたのは、ロバート・アトキンスの著書だった。アトキンスは減量のために、低炭水化物・高脂肪・高タンパク質食を推奨した。彼は正しかった。そうした食事では、タンパク質欲が満たされ、全体的に食べる量が減るからだ。

アトキンスに続いて、パレオダイエット、ケトジェニックダイエット、肉食ダイエットなど、低炭水化物食やゼロ炭水化物食を推奨するダイエットが流行した。肉、魚、卵、バターだけを食べて、楽に体重を減らし、強壮で動物的な健康を手に入れよう、という考えである。

キッチンの背景にタンパク質源の選択、コピースペース
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こういった手法はどれも確実に減量を促す。タンパク質を十分摂ることで飢えが満たされるうえ、超・低炭水化物のケトン食を摂る(1日当たりの炭水化物摂取量を20g――リンゴ1個分に相当――以内に抑える)と、体は細胞の主な燃料としてグルコース(ブドウ糖)の代わりに、脂肪の分解産物であるケトンを燃やすようになるからだ。またケトンはタンパク質の摂取量が少ないときにも、カロリー摂取を抑制する効果があると考えられている。

「炭水化物」を減らすとどうなるのか

低タンパク質(9%)/超・高脂肪(90%)のケトン食は、小児てんかんの治療をはじめ、特定の状況で治療効果を発揮する。また超・低炭水化物・低エネルギー食は、2型糖尿病の症状改善に役立つ場合がある。

だがどちらの食事も、ほとんどの人の日常的な食事としては持続可能でないし、望ましくもない。それほど極端でない低炭水化物・高脂肪食でさえ、長続きしない。ほとんどの人が、やがて主要栄養素がバランスよく含まれた食事に戻ってしまう。

理由は単純だ。食事からほとんどの炭水化物を取り除けば、炭水化物欲にスイッチが入り、デンプン質の甘い食品がたまらなく食べたくなる。何日か炭水化物を減らして、どうなるか見てみよう。

おまけに食事のタンパク質比率まで低ければ、タンパク質と炭水化物の両方が無性に食べたくなるという二重苦にさいなまれ、そのうえ脂肪など見たくもなくなる(脂肪欲が脂肪の摂りすぎを止めさせようとして、そう感じさせる)。